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研究概要Research Projects

カルボニルイリドの不斉 1,3-双極性付加環化反応

Introduction

分子内にカルボニル基を有するジアゾカルボニル化合物を酢酸ロジウムなどの遷移金属触媒を用いて分解すると、分子内カルベノイド-カルボニル反応によりカルボニルイリドと呼ばれる化学種が生成することが知られています。この化学種は、アルケン、アルデヒド、およびケトンなどの多重結合を持つ化合物と 1,3-双極性環状付加反応を行い、橋頭位に酸素原子を有する二環式化合物を与えます。以下に示しますように、橋頭位に酸素原子を有する二環式化合物は、マツクイ虫のフェロモンであるブレビコミンやスクアレン合成酵素阻害作用を示すザラゴジン酸など天然に生理活性物質として多く存在しており、いずれも不斉点を有する光学活性体であります。したがって、医薬品や農薬の合成の観点からカルボニルイリドの触媒的な不斉付加環化反応の開発は、この分野における極めて重要な研究課題です。

Scheme 1 Scheme 2

Our Works

当研究室では、これまでに報告例のあるキラルな Rh 触媒を用いる方法とは異なるキラルルイス酸を用いる新しいコンセプトに基づく検討を行い、希土類金属を含むキラルルイス酸を触媒として用いると、カルボニルイリドの不斉付加環化反応において、極めて高いエナンチオ選択性で触媒的不斉付加環化反応が可能であることをはじめて明らかにしました。

Scheme 3

また、カルボニルイリド-LUMO/親双極子剤-HOMO の相互作用に基づく逆電子要請型反応においても、o-メトキシカルボニル-α-ジアゾアセトフェノンに酢酸ロジウム (2 mol %) を作用させ発生させたカルボニルイリドとシクロヘキシルビニルエーテルとの反応を Eu(OTf)3 と (4S,5S)-Pybox-4,5-Ph2 より調製した錯体 (Catalyst A, 10 mol %) 存在下に行うと、付加環化体が高収率(定量的)かつ高ジアステレオ選択的 (endo : exo = 90 : 10) に得られ、endo-体の鏡像体過剰率は、92% ee に達することを見出しています。また、ジアゾ炭素上にアシル基を有するジアゾ基質を前駆体とするブチルビニルエーテルとの反応の場合には, Ni(ClO4)2·6H2O と (R)-BINIM-4Me-2QN より調製した錯体 (Catalyst B, 10 mol %) を触媒として反応させると効果的で、endo-体のみが高いエナンチオ選択性で得られることを明らかにしています。

Scheme 4
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