学生生活

学生生活 (no.4) : 丸山麻紀子(大学院 2007年入学)

IMG_0744_maruyama.jpg比較文学分野でなければ学べないものとは何でしょうか。その一部を紹介するならば、近代の比較文学、比較神話学、文芸理論、古典ギリシャ語・文学、ラテン語・文学、ロシア語・文学であると言うことができるでしょう。では、比較文学を人文学部で学ぶということは、一体どういうことなのでしょうか。


比較文学はその名の通り一つの学問領域にとどまることがありません。大学での研究はややもすると狭い研究領域に引篭もりがちですが、われらが比較分野は違います。


医学部は医学によって人の命を救うことが至上目的であり、理学部は自然科学の知識によって事象を証明し、工学部は科学的な知識の応用によって人間の生活を豊かにすることを目的としています。これらの学問は到達可能な目標をかかげ、それに向かって努力していく学問であると規定することができるでしょうが、長生きや物質的な豊かさを生み出さない、「お金にならない」文学研究の存在意義とは何なのでしょうか?


私が考えるに、この文学研究の目的と手段とは「言葉」そのものであると思います。


言葉とは磨き上げれば磨き上げるほど、その刃はより「殺傷」能力の高い武器となって人の心をえぐり、また同時に、絶望の淵にいる人を救い出す、代替不能な特効薬となりえるものなのです。


物質的な豊かさを生み出さない学問を志している以上は、自らの言語を磨き、想像力を持って言語を操り、いかに他者の心を動かし、そして最終的にいかに人を救うか。


文系の学生の唯一無二の武器である「言葉」を磨く。比較文学分野で学べることとはまさにこれなのです。文学という領域を縦横無尽に駆け巡り「比較文学」の至上命題、異なったジャンルの諸作品の比較研究を進めることによって、あなたは様々な論理的に考える上での「手段」を学ぶことが出来るでしょう。比較対象の共通点、相違点を見つける着眼力、与えられた題材を発展させる発想と構想の力、論理的な思考によって考えを他人に誤差なく伝え、文章によって他者を説得する弁論の力。


その実質的なトレーニングの「場」を惜しみなく提供しているのが、この比較文学分野の最大の特色であると私は考えます。


比較文学に来て、自らの意見を遺憾なく述べ、そしてどうぞ大いに恥をかいて下さい。恥をかくことが是とされるのは学生の特権です。そして、真の言葉の力とは一人悶々と本を読むだけではなかなかに習得は難しいものです。学識豊かな佐々木先生、野津先生、渋谷先生のお三方、それに個性豊かな先輩と大いに議論を重ね、比較文学で自らの武器を「虎視眈々と(!)」磨いて下さい。

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