[人工林の生態系サービス]

人工林は木材生産だけでなく,炭素固定,生物多様性維持,水土保全といった機能を多面的に提供しています。この生態系が人類に提供する効果は,生態系サービスと呼ばれています。本研究室では,人工林の多面的な機能を高度に,かつ持続的に発揮させるための造林技術の開発を目指しています。
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林道(宿谷担当) 森林路網が林床植生に及ぼす影響
森林路網は林業の作業効率を高めるために必要なものです。それでは森林の生物多様性や生態系サービスの観点からはどのように評価されるものなのでしょうか?私たちは林齢や路網の上部と下部で植生の応答が異なることを見出しました(手良沢山演習林,担当・宿谷,2014)。

研究成果
・2014年度卒業論文

根羽村スギ人工林冠雪害(村山担当) 根羽村スギ人工林の冠雪害リスク評価
2013年2月根羽村で発生した冠雪害は大規模なものとなりました。気候変動に伴い大雪の増加が予測されている現在,もともとの寡雪地帯ではこのような冠雪害が増加する可能性があります。そこで私たちはどのような林分が冠雪害のリスクが高く,間伐などの施業がリスク回避にどの程度有効であるのかをシミュレーションにしたがって予測しました。(根羽村,担当・村山,2014)。

研究成果
・2014年度卒業論文


根羽村コンテナ苗(小濱担当) 根羽村コンテナ苗の枝葉マルチング実験
伐採時に発生する枝葉を用いてマルチングを行ったら苗の成長は促進されるのか?抑制されるのか?そのような現場検証を行ってみました。結果としては苗自身の成長には影響はありませんでしたが,雑草木の発生が抑制され,競合状態が緩和されることがわかりました。(根羽村,担当・小濱,2014)。

研究成果
・第126回日本森林学会,20150328-30,札幌市
・2014年度卒業論文




信濃町コンテナ苗(小濱担当) 信濃町霊仙寺山国有林におけるスギコンテナ苗植栽試験
信濃町で11月に植栽されたコンテナ苗の活着成績は良いものではありませんでした。これは中信,北信が全国的にみても降水量が少ない地域に該当するからだと考えられます。中央高地式気候の長野県では「どこでもいつでも植えられる」というコンテナ苗のうたい文句に注意しておかないといけないかもしれません(根羽村,担当・小濱,2014)。

研究成果
・第126回日本森林学会,20150328-30,札幌市




ヒノキ若齢人工林のCO2固定(城田担当) ヒノキ若齢人工林のCO2固定機能の評価
ヒノキ人工林の1次生産は40年生から50年生にかけてピークに達します。私たちはこのメカニズムを明らかにするために,枝の構造と分布に着目して調べています。毎木調査にはじまり,枝分布,枝の空間構造,枝の物質分配,肥大成長にいたる調査を行い,1次生産が低い幼齢林や壮齢林との比較を行います。神戸大学の石井さん,千葉大学の梅木さん,九州大学の榎木さん,信州大学の小林さん,安江さんとの共同研究です。(手良沢山演習林,担当・城田,2010-2012)。

研究成果
・第77回日本植物学会大会,20130913-15,札幌市
・Gordon Research Conference: Metabolic Basis of Ecology, 20120722-20120727


ヒノキ人工林の三次元構造(城田担当) ヒノキ人工林の3次元構造解析
地上LiDarを用いることで森林の空間構造を数値化してバーチャルフォレストを作成することができます。このバーチャルフォレストをもとにどのような情報が引き出せるか,また,その値は現存量などの実測値とどのような対応をするのかを調べています。神戸大学の石井さんのプロジェクトのもとで行われる,千葉大の加藤さん,梅木さん,九州大学の榎木さんとの共同研究です。信州大学造林学研究室では現存量,表面積,一次生産の計測を担当しています。(手良沢山演習林,担当・城田,2011-2013)。

研究成果
・第121回日本森林学会学術講演集CD-ROM,Pa1-60→要旨


手良沢・下層植生への間伐効果(飯野担当) ヒノキ人工林の植物種多様性におよぼす立地環境と林分構造の影響
天然林だけでなく人工林においても,種多様性の創出・維持が求められるようになってきました。本研究では,手良沢山演習林のヒノキ人工林に57の調査地点を設置し,植物種多様性に対する立地特性と林分構造の影響を解析しました。その結果,これらの要因に対する植物の種数の反応は,シダ植物,草本植物,木本植物によって異なっていました。人為的に改変可能な林分構造の制御と,改変不可能な立地条件の情報を基盤に,種多様性の向上を図ることが重要であると結論されました。(手良沢山演習林,担当・飯野,2008-2011)

研究成果
・第122回日本森林学会学術講演集CD-ROM,J13, 2011


資源植物 ヒノキ人工林において混交可能な有用広葉樹の検索とそのデータベース化
広葉樹の中には,新芽を食材とするタラノキや,若葉を食し,さらに材を'すりこぎ'に加工するサンショウなど,針葉樹と混交した状態で有用資源となる植物があります。従来の研究では,広葉樹の混交化や広葉樹林への導入を目的としており,ヒノキとの混交状態における広葉樹利用を検討した例は少ないのが現状です。そこで,手良沢山ステーションのヒノキ人工林に生育する広葉樹を調査し,その混交可能性と有用性を検討し,データベース化をはかっています。荒瀬研究室小林研究室との共同研究です(手良沢山演習林,担当・城田,2010-継続)。

研究成果
信州大学AFC報告10:45-60, 2012
ヒノキ人工林の資源植物データベース


根羽村下層植生(荒井担当) 根羽村スギ人工林における植物種多様性と資源植物の探索
天然林だけでなく人工林においても,種多様性の創出・維持が求められるようになってきました。本研究では,根羽村のスギ人工林を対象に広域調査を行い,植物種多様性に対する立地特性と林分構造の影響を解析しています。2013年10月現在,138調査地で450種以上の植物をリストアップしています。これらの中には山菜として利用されるタラノキやコシアブラなどが含まれています。これら資源植物の活用は森林の持続的経営の実現に有効と考えられます(根羽村,担当・荒井,水野 2012-2013)。

研究成果
・第125回日本森林学会大会 P2-030,20140329,大宮市
・第3回中部森林学会大会,20131019,岐阜市
・2013年度卒業論文
・2012年度卒業論文


根羽村精油抽出(野畑担当) 根羽村スギ針葉からの精油抽出
針葉から抽出される精油はフィトンチッドの成分を含んでおり,アロマオイルを精製することもできます。一般に針葉は伐採されたときの未利用資源として林地に残されますが,精油として抽出し,活用することを検討してみました。ここでは単位針葉量から精製される精油と林分あたりの針葉量を求めることで,林分あたりの精油収量を推定しています(根羽村,担当・野畑 2013)。

研究成果
・2013年度卒業論文


手良沢・下層植生の長期動態(伊藤担当) 強度間伐を受けたヒノキ壮齢人工林の下層植生の発達過程
約60%の強度間伐を受けたヒノキ人工林において下層植生の推移を追跡しています。間伐前には林床植生は皆無でしたが、10年目には広葉樹の更新が見られるなどの変化がありました。15年目の調査では、低木が発達することによって、林床が暗くなり、草本植物や木本植物の更新が阻害されていることが明らかにされました。さらに20年目では林冠の再閉鎖に伴って低木層の衰退が始まりつつあります。(手良沢山演習林,担当・伊藤,小出1999-継続)。

研究成果
信州大学AFC報告10:17-26, 2012
・第121回日本森林学会学術講演集CD-ROM,Pa1-66,2010→要旨
・2014年度卒業論文
・2009年度卒業論文
・2004年度卒業論文
・1999年度卒業論文
・第124回日本森林学会,2012


ヒノキ壮齢林の埋土種子(森本担当) 強度間伐を受けたヒノキ壮齢人工林の林床植生の衰退
上記の強度間伐試験地において,間伐後の林床植生の発達と衰退が示されました。本研究では,どのような種が消失していったのか?,これらの消失に低木層の発達は強く関わっているのか?,また,林床からの消失種は低木に成長したり,埋土種子を残していったのか?という疑問を解明しました。(手良沢山演習林,担当・森本,2010)。

研究成果
信州大学AFC報告10:27-37, 2012
・2010年度卒業論文


強度間伐を受けたヒノキ壮齢林のCO2固定機能(北原担当) 強度間伐を受けたヒノキ壮齢人工林のCO2固定機能の評価
壮齢ヒノキ林の強度間伐試験地において、上層の林冠閉鎖が不十分であること、低木が旺盛に発達していることが明らかにされました。本研究では、上層のヒノキと低木層の落葉広葉樹の純一次生産(NPP)をつみあげ法によって求めました。その結果,低木層がNPP全体の15%を占めていること,低木のNPPのほとんどが土壌への供給に寄与していることが明らかにされました。(手良沢山演習林,担当・北原,2010)。

研究成果
・第122回日本森林学会学術講演集CD-ROM,J13,2011→要旨
・2010年度卒業論文


ヒノキ壮齢林の種子散布(成瀬担当) 強度間伐を受けたヒノキ壮齢人工林における種子散布
強度間伐試験地において下層植生の発達が示されました。本研究では,これらの下層植生が繁殖を行い,新しい更新システムを生み出しているのかどうかを検討しています。99個のシードトラップを設置し,集められた種子が林床植生と対応するのかどうか,また,林外からの種子供給と比べて,林内からの種子供給がどのくらい多いのかを調べました。その結果,種子散布を行っている低木はまだ少なく,持続的な林床の多様性維持には外部からの種子供給が必要であることが示されました(手良沢山演習林,担当・成瀬,2011)。

研究成果
・2011年度卒業論文


ヒノキ壮齢林の実生更新(川村担当) 強度間伐を受けたヒノキ人工林林床における実生更新の阻害要因
強度間伐試験地において低木層の発達とともに林床植生の衰退が示されました。一方で,この人工林では風散布型の植物が少なく,鳥散布型の植物が多いことがわかってきました。風散布型の植物は鳥散布型の植物と比べて種子が小さく,実生更新が被圧や地表攪乱に阻害されやすいと考えられます。そこで本研究では,低木の刈り払いによって林床の光環境をコントロールし,さらに地表攪乱の強度を計測しながら,種子散布型による実生の更新動態を比較しています。(手良沢山演習林,担当・川村,2012)。

研究成果
・2012年度卒業論文
・第2回中部森林学会,2012
・中部森林研究2,2013
・第124回日本森林学会,2012


ヒノキ人工林におけるスズタケの分布(森本担当) ヒノキ人工林におけるスズタケの分布に及ぼす森林施業と地形要因の影響
ササは実生の更新を阻害し,人工林の種多様性を低減させる要因となっています。しかしながら,ササそのものも人工林の林齢や施業体系に影響を受けることが考えられます。本研究では10年生から70年生のヒノキ人工林においてスズタケの空間分布を調べ,スズタケの分布に対する地形要因と施業の影響を解析しています。(手良沢山演習林,担当・森本,2012)

研究成果
・2012年度卒業論文


未利用資源の利用(岡野担当) 林地残材のチップ化による有効活用
主伐,間伐を行った際に,用材として利用できない樹冠部や根張り部は‘林地残材’として放置されてきました。そこで林地残材をチップ化し,畜産農家に利用してもらうための資源循環利用に関する研究を行っています。信大AFC,農村計画研究室との共同研究です(手良沢山演習林,担当・岡野,2010)。

研究成果
・信州大学農学部AFC報告 9: 117-122, 2011→全文(機関リポジトリ
・信州大学農学部AFC報告 8: 81-83, 2010 →全文(機関リポジトリ)


カラマツ人工林のレフュージア機能 カラマツ人工林のレシュージア機能の評価
カラマツ人工林には,多くの広葉樹が侵入し,成長することが知られています。これらの侵入した広葉樹は,種子の散布源となり,周囲の森林が攪乱を受けたときの修復に役立つと考えられています。しかし,その実態は明確にされていませんでした。本研究では,冷温帯上部に植栽されたカラマツ人工林において,侵入した広葉樹の階層構造や種子の散布型を調べることにより,種子供給能力を評価しました。その結果,長距離の散布に高い樹高が必要な風散布型の広葉樹は,十分な樹高に達しておらず,種子供給能力は十分に発揮されていないことが明らかにされました。(西駒演習林,担当・田中,2008-2011)。

研究成果
・信州大学農学部AFC報告 9. 11-19, 2011 →全文(機関リポジトリ)


富士北麓フラックス観測サイト(岡野担当) カラマツ人工林のCO2固定機能の評価
地球温暖化の原因とされるCO2濃度の増加を緩和させるために、森林の存在は重要とされます。当研究室では、国立環境研究所が運営する富士北麓フラックス観測サイトで、成熟したカラマツ人工林が持つCO2固定・蓄積機能の推定を行っています(富士北麓フラックス観測サイト,担当・岡野,2006-継続)。

研究成果
・日本森林学会誌 90.pp.297-305,2008→要旨(CiNii)







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