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第9回ライフクリエイター入門演習が行われました。

ライフクリエイター入門演習

第9回 「AIと法・倫理」(2021年6月16日)

信州大学社会基盤研究所 特任教授 梶谷篤、特任教授 山口真由

信州大学社会基盤研究所 特任助教 根津洸希

第9回の講義では、情報の取り扱いに詳しい梶谷篤弁護士が、技術には人間社会にとって役立つ側面と危険な側面があると強調した上で、AIによる個人情報の活用を法律や倫理の観点から解説し、社会に受け入れられる個人情報の利活用について考えました。また、AIが関わる判断をめぐる刑事責任に詳しい根津洸希特任助教が、自動運転をプログラムする際の法律的・倫理的課題について話しました。

1.AIによる個人情報の利活用

医療機関での患者の診療データを活用し医療用AIを生成する、店頭に設置したカメラで来客の顔写真と購買情報をリピート分析に利用するなど、個人情報はAIが最も必要としているデータである。これらを扱う際には個人情報保護法やマイナンバー法など情報に関する法律を念頭に慎重に検討するべきである。JR東日本がICカード乗車券の乗降履歴を他社に提供する計画を発表した際には、法律に違反していないにも関わらず世間からの反対を受け炎上する事態となった。情報化社会の進展で便利になった一方で人々は不安も抱いており、個人情報の利活用については倫理的な面からも丁寧な検討が求められている。

2.プライバシーと個人情報

プライバシー権は1890年にアメリカで提唱され、テレビや新聞などのマスメディアとともに1960年代から発達、個人の秘密や私生活をみだりに公表されない権利とされた。1980年以降は行政機関や企業による個人情報の収集が問題になり、プライバシー権は自己情報のコントロール権とされ、個人の情報そのものを保護するべきであると考えられるようになった。2000年代にはインターネットの発達でネット上に個人情報が氾濫する事態となり、個人情報保護法の必要性が認識されるようになった。これにより、個人情報の利用や取得における義務が明示され、不正手段による取得の禁止などが定められた。

3.技術の発展と法律の改正

企業はAIの分析で効果的な戦略を練るためにより多くのパーソナルデータ(広義の個人情報)を得る努力をし、私たちは検索履歴、行動履歴、位置情報などのパーソナルデータを切り売りしてさまざまなサービスを受けている。技術の発展に対応するために法律は改正を繰り返しており、パーソナルデータの利活用と保護の調和が課題となっている。

4.自動運転と法・倫理

人間の代わりにAIが運転する自動車が事故を起こした場合、責任の所在はどこにあるのか、どのような規則や常識に従ってプログラミングするべきなのかなど、これからさらに検討されるべき課題は多い。例えば、ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるとするか(功利主義)、許されないとするか(義務論)という答えのない問題について、現実の人間の道徳感覚が研究されている。

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