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第3回ライフクリエイター入門演習が行われました。

ライフクリエイター入門演習

第3回 「現代AIが可能にしていること⑵」(2021年4月21日)

信州大学社会基盤研究所 特任教授 林憲一

第3回目は前回に引き続き「現代AIが可能にしていること」と題し、精度が高くなければ役に立たないAIを紹介しました。空港での出入国管理に利用される顔認証のAIや製品の検査に使われるAI、自動運転に関するAIなどは性質上、高い精度が求められるとし、現代社会の課題を解決する重要な働きをしていると話しました。

1.AIを使った顔認証の広がり

空港の出入国管理での本人確認にAIを使った顔認証が導入されている。従来は人が行っていた作業であるが、現在はパスポート内のICチップに入っている画像データと目の前の人が同じかどうかを、経年による外見の変化も含めてAIが判断し、その精度は99.9%を上回るという。国家権力の行使の場にまでAIが導入されている事例である。

スマートホン決済の普及が進んでいる中国では、自分の顔を認証させることで支払いができる仕組みも始まっている。あらかじめ登録した自分の顔を認証させて通過する自動改札機も登場し、AIの顔認証により「顔だけ持っていれば財布もスマホも必要ない」という時代が近づいている。

2.AIを使った検査

製造業は従業員の2割が荷物を運び、6割がコアなものづくりに携わり、残りの2割が製品の検査をしているとされる。先進的な企業では、物を運ぶ作業と検査する作業についてAIを使って自動化し、ものづくりに人材を集中させる取り組みを進めている。自動車の重要部品などは少しの不良品も許されないため、AIの精度も高いものが求められる。

工場のプラントの設備検査にもAIの技術が使われている。プラント内を這い回る膨大な数の配管を目視で点検する作業は大変であり、頻繁にはできないという課題がある。AIを使った検査では異常が起きるときの予兆をいち早く察知し、修理や交換作業につなげることができるため、プラントを安定的に稼働させることができる。国も設備検査でのAI導入を進めており、生産性と安全性の向上を目指している。

3.AIによる自動運転の実現

全世界で交通事故の死者は毎年130万人にも上り、これを減らしていくことは大きな社会課題である。自動運転はその課題解決につながると考えられ、日々、研究と実証実験が行われている。自動運転は、まず、高精細な三次元の地図の中で自分が今どこに位置しているかを決定する。光の反射を使って近くにある物体との距離を測る装置(LiDAR)などから膨大な情報を得て、障害物をよけながら走行する。画像から車、歩行者、歩道、木、信号などを読み取る必要があるため、世界中の道を走って運転者からの視界を録画し、AIにさまざまなパターンを学ばせることによって運転の精度を高めている。

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