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第15回ライフクリエイター入門演習が行われました。

ライフクリエイター入門演習

第15回 これまでの講義のまとめ(2021年7月28日)

信州大学社会基盤研究所 特任教授 林憲一

1.身近なAI

私たちの生活の中には数多くのAIがある。例えばSiriは音声認識、自然言語理解、命令実行、返答(音声合成)という過程をAIで実現している。空港の出入国管理では顔認証ゲートの導入が拡大され、工場では熟練工に代わって検品作業をするAIが活躍している。

Youtubeやネットニュースでは検索履歴をもとにAIがおすすめの動画や記事を提案するリコメンデーション機能に触れる機会が増えた。AIが私たちの生活を便利にしている一方で、私たちの目にする情報はすでに意図的に選別されているということを忘れてはいけない。自分の目に耳に心地の良いものだけを取り入れているうちに、世界は分断されていく恐れがあることを忘れてはいけない。

2.AIの歴史

1946年に世界で初めての汎用コンピュータENIACが開発された10年後の1956年、学者たちが集ったダートマス会議で初めて「AI(人工知能)」という言葉が使われた。しかし、現在に至るまで「人工知能」という言葉の定義はあいまいであり、何をもって「知能」に値するものとするかは学者によって見解が分かれている。

これまでにAIは三度のブームを経験し、現在は第3次AIブームの真っただ中である。1950年代後半からの第一次ブームは推論・探索の時代と呼ばれ、簡単なトイプロブレムしか解くことができずに下火となった。1980年代の第二次ブームは知識の時代とされ、問題に対し知識をプログラミングした機械が解決へ導くAIが登場したが、知識の記述に限界をみてブームが去った。2012年ごろから始まった第三次ブームでは機械学習やビッグデータが特徴で、AIができることが飛躍的に増えた。

3.現代AIのしくみと公平性・倫理

現代AIは膨大な数のデータから統計的な手法で傾向を学び(学習)、判断する(推論)方法を基本とする。教師データをアルゴリズムに学ばせて学習済みモデルを作り、そのモデルに現場データを入力して推論を導く。

統計学を基礎としている機械学習は、過去と未来は変わらないという前提で推論を出す。現在の社会に存在する差別を固定し、偏見を再生産する結果を生み出す可能性がある。AIは必ずしも公平で倫理的であるわけではなく、私たちはそのことに意識的でなくてはいけない。AIの開発にとって倫理の問題を解決することはコストがかかる一方で、AIの現状と社会通念や社会価値のギャップを埋めることはビジネスチャンスにもつながる。

4.AIと職業

日本では約半数の職がAIに代替されるリスクにさらされているという。一方で、AIの登場で新しく生まれる職種も多い。変化の速いこれからの社会において新しい技術を積極的に取り入れることが大切である。

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