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光で遺伝子のスイッチを入れる

光で生命現象を操作する研究をしています。あらゆる生命現象はどの遺伝子がいつ・どの細胞で・どの程度の間スイッチONになるかに支配されています。遺伝子のスイッチを好きな時に人為的に入れることができれば、どんな生命現象も操作することができます。私たちは、光で遺伝子のスイッチを入れる方法を開発しました。

なぜ光を使うのか

細胞はあまりにも小さいので、電化製品のように手でスイッチを入れることはできません。ですから、手に代わる何かでスイッチを入れなくてはいけないのですが、ここで考えれるのは熱や電気、そして光の刺激でスイッチを入れる方法です。このうち熱や電気は拡散してしまうので、1個の細胞だけを狙いうちすることはできません。唯一、光はレンズを使って絞ることで、1μm(細胞の直径の1/10)以下の小さな空間を刺激することができます。この利点を活かし、組織の中の1個の細胞だけで遺伝子のスイッチを入れるために光を使っています。

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光操作により、狙った1個の細胞のみを神経細胞に分化させることに成功しました。


どうやって光で遺伝子のスイッチを入れるのか?

光を照射すると形が変わる分子を遺伝子につけます。その分子の形の変化が遺伝子に伝わりスイッチが入る仕組みです。この方法は、スイッチを入れるだけではなく、別の色の光を当てるとスイッチを切ることもできます。ですので、遺伝子のスイッチを入れている期間を正確にコントロールでき、従来の方法では調べられなかった、遺伝子の発現期間の機能的役割を調べることができます。

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照射する光の種類を変えて、遺伝子の発現を観察します。


これまでに、神経細胞への分化やゼブラフィッシュの胚の発生を光操作し、その過程で働く遺伝子の発現期間の重要さを調べてきました。

小笠原 慎治