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信州大学 理学部 ようこそ、探求の世界へ。理学クエスト
浅見 崇比呂

浅見 崇比呂

生物学コース

講座:進化遺伝学分野
略歴:
1983年 東京都立大学大学院中退
1988年 バージニア大学大学院卒業
1989年 バージニア大学環境学部研究員
1990年 東京都立短期大学講師、助教授
1999年 信州大学理学部助教授
2011年より現職
キーワード:左右性
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究めたい:生物進化why, how

左右性の進化、種形成のメカニズム

研究テーマ1 左右性の進化
動物は内臓が左右非対称。全部が左右逆なら問題ないはずなのに、内臓が左右逆の生物はほとんど進化していません。でも、カニの鋏のような外形の左右は、頻繁に反転して進化しました。なぜでしょう。この問題を解くために、世界に類のないカタツムリの鏡像変異を使い、形や行動の左右性にひそむ謎を追究しています。左右非対称な性質に着目すると、未知の奥義が次々と見つかります。着想しだいで世界を驚かす発見にいたるのは、これからの領域である証拠です。

研究テーマ2 種形成のメカニズム
生物の多様な姿は、遺伝子で子孫に伝わります。無限に近い多様な遺伝子を生物が維持できるのは、生物がたがいに識別し、交雑しない別種として繁殖しているからです。種形成(種分化)こそが、生物を多様にする源のイベントなのです。それだけに、種形成のメカニズムは、世界の生きもの好きがこぞって挑むフロンティア。種形成を促す、または妨げる要因(配偶者の選り好み・性フェロモン・交配行動・形の進化)を、生態学、遺伝学、分子系統学の手法で追究しています。

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オナジマイマイの鏡像変異体(上)と野生型(下)

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卵殻を作りながら産卵。フカアキマイマイ(殻径3cm)

理学部に水と油の"あたりまえ"

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乗鞍岳の灯火採集(3 年生夏季合宿、進化生物学実習)

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セトウチマイマイの交尾(殻径3cm)

どうしてこんなに生きものが好きなのか、生まれつきなのでわかりません。幸福は、教科書の常識を書き換える発見に気がつくときです。大それたことのようですが、独自の発想と着眼で、身近な生物現象を調べるだけでよいのです。受験勉強していると、科学って、見知らぬ世界で完成された不滅の正解のような気がしてきます。でもここでは、常識やぶりの発見を、学部4 年生や大学院生、たまに3 年生(後期から卒業研究)がものにしています。科学とは、正解の蓄積ではありません。あたりまえを疑うことなのです

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標識捕獲実験

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標識個体.どれが左巻、右巻?

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鏡像変異の定期調査(タイ東部)

科学技術――先進国には類をみない熟語です。「科学と技術」の意でしょうか。とんでもない。ごちゃまぜに輸入して元の色に戻せずにいる絵の具のようなもの。科学を生み出した先進国では、科学と技術をまぜこぜにしたほうが便利な場面なんて普通はありません。信じがたいでしょう? 科学を体験すればわかります。理学部は科学の学部。国内の今ではなく、世界の未来と向きあっています。勉学も生活も人生も、国内のあたりまえが肌に合わない人の別天地。ネクタイするのが常識、なんていう教員はいません。

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卒業研究で見つけたオナジマイマイのアルビノ変異体(殻径1cm)

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松本城の夜桜