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信州大学 理学部 ようこそ、探求の世界へ。理学クエスト
関口 龍太

関口 龍太

講座:化学コース
略歴:
2012年 弘前大学理工学部物質創成化学科 卒業
2014年 弘前大学大学院理工学研究科理工学専攻 修了
2017年 弘前大学大学院理工学研究科機能創成科学専攻 修了、博士 (理学) 取得
2017年 信州大学理学部理学科 助教 (テニュア・トラック)
キーワード:ナノカーボン分子
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未来を開拓する有機合成を行おう!

現在の研究テーマ:新規な機能性有機化合物の設計、合成、物性評価に関する研究

私は有機化学を専門としていますが、その中でも特に『構造有機化学』という分野に関係する研究を行っています。まず、構造有機化学とは『自然界に存在しない、または合成が困難な特異な分子構造を持った新規な有機化合物を創成し、それらの化合物を通して新しい物性や機能を解明していく学問』であると私は考えています。
私は、大学院生時代より一貫して基本的な有機分子である『ベンゼン(分子式 : C6H6)』を主軸に置いた新規な機能性有機π電子系化合物の合成を主要な研究テーマに設定して研究を行っています。具体的には、ベンゼンをチューブ状やシート状に多数つなげたような骨格を持つ『カーボンナノチューブ』や『グラフェン』と呼ばれる構造体の一部分を切り取った骨格を持つ『ナノカーボン分子群』と呼ばれる化合物群を合成ターゲットとして位置付けて合成検討を進めています(Scheme 1)。また、ベンゼン自体は特徴的な物性や機能を示さないものの、それが直接または間接的に多数つながることによって特異な物性や機能を示すようになります。
これまでのナノカーボン分子群の合成検討の過程で、それらの前駆体化合物について発光挙動をはじめとして特異な物性や機能が発現することを明らかにしており、そのメカニズムの解明を目指した研究も行っています(Figure 1)。

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Scheme 1. ベンゼン誘導体からカーボンナノチューブ部分構造の合成検討



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Figure 1. ナノカーボン分子群の前駆体化合物が示す特異な物性・機能の一例 : (a) 溶液状態および固体状態における高効率な青色発光挙動、(b) 顕微鏡で観察したある液晶相(灰色)から別の液晶相(オレンジ色)へと変化する様子



さらに、信州大学理学部に着任してから新たに硫黄や窒素などのヘテロ原子を含む複素環化合物やナフタレンの構造異性体である『アズレン(分子式 : C10H8)』のような非ベンゼン系芳香族炭化水素(Figure 2)を基盤とした新規な機能性有機π電子系化合物の創成とそれらの物性解明、そして機能開拓を目指した研究テーマも設定し、現在研究室に所属する学生と共に研究を展開しています。

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Figure 2. 代表的な芳香族炭化水素および複素環化合物の構造



上述したような有機π電子系化合物群は、私たちの現在の生活を支えているといっても過言ではない電子・半導体機器類(スマートフォンやノートパソコン etc.)を支える半導体材料や発光材料をはじめとする機能性材料としての利用の可能性があります。そのため、私たちの研究室で生み出される有機化合物が未来の生活基盤を一変させるような新しい機能性材料になり得る可能性を秘めていると考えています。
最期に、自然豊かな信州の地でこれまでにない新しい物性や機能を持った有機分子を私たちと共に創ってみませんか?