生物の不思議へようこそ!

私達の身の回りには面白い行動や生態をもつ生物が数多く存在しています。
未だ解明されない生物の謎を、自然に恵まれた信州でとことん研究してみませんか。
ここでは、生物学コースの先生が研究する“不思議”をご紹介します。
Q1. メダカの雌雄はどのように決まる?
A1. メダカ属魚類は性染色体により性が決まり、まず精巣または卵巣が分化してきます。しかし、この分化過程は近縁種間でも異なることが見つかってきました。また性ステロイドホルモンを投与すると性転換が起こりますが、このときは正常なとは異なる過程を経て精巣または卵巣が形成され、その様子は系統間でも違います。何が起こっているのでしょうか?成体では二次性徴が発達しますが、その発達場所や度合にも近縁種間で違いが見つかってきました。特定の種にしか見られない形態は、何を反映しているのでしょうか?これらの疑問について調べています。
Q2. どちらがメス?
A2. 雌雄同体なので、どちらのカタツムリも雌雄の二役ができます。だから一度の交尾で精子を交換し、両方が産卵できます。写真の右側は、左右逆に発生した変異体で、左巻き。この系統は世界で信州大にしかありません。左側は普通にいる野生型の右巻きです。
Q3. 左側の大腸菌だけが光るのはなぜ?
A3. 左側の大腸菌には、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク(GFP)の遺伝子を入れてあるので、光をあてると緑色の蛍光を発します。生体生化学実験では、大腸菌に遺伝子を入れる実験、大腸菌のプラスミドを取り出して電気泳動で調べる実験、酵素を抽出活性を測定する実験、細胞小器官を単離する実験などをおこなっています。
Q4. 日本列島の多様な生物の世界はどのようにして創出された?
A4. 約2500万年前頃、のちに日本列島を構成することとなる陸塊はユーラシア大陸の東縁に位置していたとされます。やがて、大陸から離裂するようにして日本列島の原型がつくられますが、東日本と西日本はそれぞれ独立して「観音開き」のように離裂したと考えられています。このようにして形成された島嶼は「大陸島」と呼ばれます。一方で、海洋の火山活動などにより形成された島を「海洋島」といい、小笠原諸島や伊豆諸島などが該当します。

大陸島の生物相は、「大陸の出店(サテライト)」的となることが多く、種多様性が低いのが一般的です。また、海洋島は生物相がゼロの状態からはじまり、独特の生物相が築かれることで知られますが、種多様性は低いのが一般的です。

しかしながら、日本列島の生物相は、種多様性が高いことに加え、遺伝的多様性も高いことが明らかとなりつつあります。生物多様性の世界的ホットスポットとも称されています。

南北に長い弧状列島であり複数の気候区分やバイオーム(生物群系)を縦断すること、大きな標高差、アジアモンスーン気候の影響を強く受けた湿潤な気候などは多様性創出に大きく寄与しています。また、4つの主要なプレートがぶつかりあう場所でもあり、これに伴う火山活動や地殻変動などの地質学的要素も先に述べたような地史と併せて重要な要因の一つと言えます。

そして信州は、東-西日本の境界であり、大きな断層(糸魚川-静岡構造線)が位置し、また2つの大陸プレートの境界でもあります。この地域を境界とした種分化や遺伝的分化は、様々な動植物などで確認されています。すなわち、信州は「生物多様性のホットスポットのなかのホットスポット」なのです。
Q5. 温暖化は植物群集にどのように影響する?
A5. 植物の分布には温度条件が大きく影響しています。そのため、標高が高くなるにしたがい、照葉樹林、落葉広葉樹林、針葉樹林、高山植生のように植生が変化します。温暖化は植生をより高い標高へ押し上げると考えられています。しかし、高木限界の標高は温度だけでは決まっていないため、温暖化によって単純には上昇しないことが分かってきました。
Q6. 信州に分布するマルハナバチは何種類?
A6. 長野県には10種のマルハナバチが分布しており、分布標高が種ごとに異なっています。しかも、これらのマルハナバチは、体の大きさが種ごとに大きく違っています。
この2つのことから、訪花するマルハナバチ類の平均的な大きさを標高ごとに比較すると、高標高では小さくなる傾向があることがわかってきました。
Q7. なぜ植物は自身が作る毒に強い?
A7. 植物は自身を守るためにしばしば毒を作ります。そして、自身がその毒でやられないよう、その毒に対して様々な自己中毒回避機構を備えています。細胞外に隔離する、毒になる一歩手前の状態で貯蔵する、毒のターゲット分子を変えてしまう、などなど。その仕組みは植物種や毒によって異なり、近年解明されてきていますが、まだまだ分からないことだらけです。
Q7. どうして野山には赤い色の花が少ない?
A7. 野山や道端には黄色、ピンク色、紫色、青色、白色などの花が咲いていますが鮮やかな赤い色の花はほとんど見られません。植物が目立つ色の花をつけるのは花粉媒介者を呼び寄せるためですが、ミツバチのような昆虫には赤い色が見えないので、日本の野山には赤い花をつける植物はほとんどありません。アメリカ大陸にはハチドリという小さな鳥が生息しており、花粉の媒介者となります。鳥の仲間は赤い色を見ることができるのでハチドリのように花粉を媒介していくれる鳥がいるような地域では自然界にも赤い花が見られます。ちなみに花壇で見られる赤い花のほとんどは外国から移入したり園芸用に品種改良して作り出したものです。
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