高齢者の大腿骨近位部骨折、「雪」より「寒さ」が影響? ―長野県の研究結果が国際学術誌に掲載―
【研究成果のポイント】
大腿骨近位部骨折は冬に増えることが知られていますが、降雪と低気温の影響は十分に区別されていませんでした。本研究では、長野県内のデータを解析した結果、冬季の大腿骨近位部骨折には、「降雪」よりも「気温の低下」が関連している可能性が示されました。
本研究は、骨折予防において、降雪だけでなく、寒い日そのものにも注意することの重要性を示すものです。
【概要】
信州大学医学部衛生学公衆衛生学教室 野見山哲生らの研究グループは、長野県の65歳以上の大腿骨近位部骨折2,292例を対象に、降雪と気温が骨折発生に与える影響を解析しました。
その結果、降雪後に大腿骨近位部骨折が増える傾向がみられましたが、気温を考慮すると降雪との関連はみられなくなりました。一方で、気温が低いほど骨折が多いという関連は、降雪の影響を考慮しても認められました。
冬季の骨折予防には降雪だけでなく、気温が低い日そのものに注意することが重要である可能性が示されました。
本研究成果は、環境科学分野の国際学術誌「Environmental Research」に掲載されました。

【背景】
大腿骨近位部骨折は、高齢者の生活の質や自立した生活に大きな影響を及ぼすだけでなく、死亡や医療費の増加にもつながる重要な健康問題です。高齢化に伴い、大腿骨近位部骨折は今後さらに増加すると予測されており、予防可能な要因を明らかにすることが求められています。
冬季には、雪や氷によって屋外の路面が滑りやすくなるほか、厚手の衣服や悪天候による視界不良などが転倒につながる可能性があります。そのため、降雪は転倒を引き起こし、大腿骨近位部骨折の危険性を高める要因として注目されてきました。
一方、降雪時には同時に気温も低くなるため、これまで「雪の影響」と考えられてきたものに「寒さの影響」が含まれている可能性がありました。そこで、本研究では、「雪が降ったこと」と「気温が低かったこと」の影響をそれぞれ切り分け、大腿骨近位部骨折との関連を検討しました。
【研究手法・成果】
2014年から2019年の冬に、長野市、飯山市、大町市、松本市、飯田市、諏訪市で発生した65歳以上の大腿骨近位部骨折2,292例と、降雪および気温データを合わせて解析しました。
気温を考慮しない解析では、骨折発生前に雪が降った日は、雪が降らなかった日に比べて骨折が多い傾向がみられました。しかし、気温の影響もあわせて考えると、降雪と骨折との間に明確な関係は確認できませんでした。
一方で、気温が低いほど骨折が多いという関連は、降雪を考慮した後も認められました。
【波及効果・今後の予定】
本研究から、冬季の骨折予防には降雪だけでなく、気温が低い日そのものに注意することが重要である可能性が示されました。
今後は、骨折が起きた場所や個人の行動なども考慮した研究を進め、寒さが大腿骨近位部骨折につながる仕組みを詳しく明らかにする必要があります。
【論文タイトルと著者】
タイトル:Associations between snowfall and hip fracture among adults aged 65 years and older in six cities in Nagano Prefecture, Japan
著者:長谷川航平1,2、五十嵐優希1、森恒輝1、塚原照臣1,2,3、野見山哲生1,2,3
1 信州大学医学部衛生学公衆衛生学教室、2 信州大学医学部小児環境保健疫学研究センター、3 信州大学医学部産業衛生学講座
掲載誌:Environmental Research
DOI:10.1016/j.envres.2026.125590
【問い合わせ先】
〈研究内容に関する問い合わせ先〉
信州大学医学部衛生学公衆衛生学教室
講師 長谷川航平
Tel:0263-37-2622 Email:koheih[at]shinshu-u.ac.jp
〈報道に関する問い合わせ先〉
国立大学法人信州大学総務部総務課広報室
Tel:0263-37-3056 Email:shinhp[at]shinshu-u.ac.jp
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