「母親のPFASばく露と3歳および4歳時点の機能性便秘の有無との関連について:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」 に関する研究論文の発表について
エコチル調査(※1)甲信ユニットセンター(信州大学)の野見山教授らの研究チームは、エコチル調査のデータを用い、妊娠中(前期)の母親17,686人の血中PFAS(※2)濃度と子どもの3歳および4歳時点の機能性便秘(構造的な異常がないにも関わらず排便が困難になる状態)の有無との関連を解析しました。
その結果、母体血中PFOA濃度と4歳時点の機能性便秘の有無との間に正の関連が見られましたが、その他のPFASと4歳時点の機能性便秘の有無との間に関連は見られませんでした。また、対象としたすべてのPFASと3歳時点の機能性便秘の有無との間に関連は見られませんでした。
母体血中PFOA濃度と4歳時点の機能性便秘の有無との間に正の関連が認められましたが、本研究はPFOAが機能性便秘の原因になるかどうかを直接調べたものではありません。また、PFOAが機能性便秘の原因になると考えられる十分な説明もできていません。本研究で見られた関連については慎重に解釈する必要があり、今後の研究が必要です。また、本研究における限界点として、機能性便秘の有無が保護者の自己申告であることから評価が主観的な点、対象者の腸内細菌叢に関するデータ得られていないため関連性について検討できていない点、観察研究であり交絡因子の影響を否定できない点などが挙げられます。これらの点にも注意が必要です。
本研究をまとめた論文は、令和8(2026)年5月21日付で、『Environmental Health and Preventive Medicine』に掲載されました。
※記載内容は、すべて著者の見解であり、環境省及び国立環境研究所の見解は含まれません。
※本研究に関する補足説明資料を作成しました。以下のURLも併せて確認ください。
(https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/pmph/pfas_fc.pdf)
1.発表のポイント
- 母体血中PFOA濃度と4歳時点の機能性便秘の有無との間に正の関連が見られました。
- その他のPFASと4歳時点の機能性便秘の有無との間に関連は見られませんでした。
- 対象としたすべてのPFASと3歳時点の機能性便秘の有無との間に関連は見られませんでした。
2.研究の背景
「子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、「エコチル調査」)」は、胎児期から小児期にかけての化学物質へのばく露(※3)が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査(※4)です。さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との影響を明らかにしている世界的にも注目されている調査です。
エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを置いています。また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された全国15の大学等に調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と各関係機関が協働して実施しています。
近年、PFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称)の腸内細菌そうへの影響が研究されていますが、機能性便秘との関連はほとんど調べられていませんでした。そこで本研究では、妊娠した母親の妊娠前期の血中PFAS濃度と子どもの3歳時点および4歳時点の機能性便秘の有無との関連を調べることにしました。
3.研究内容と成果
本研究では、エコチル調査に参加している約10万人の妊婦のうち、血中PFAS濃度を調べられた約25,000人のデータの中から、データが欠測している妊婦を除いた17,686人のデータを分析に使用し、生まれた子どもの3歳時点および4歳時点の機能性便秘の有無を調べました。PFASについては、7種類の個別の合算でないPFAS(PFOA、PFNA、PFDA、PFUnA、PFTrDA、PFHxSおよびPFOS)を分析対象としました。関連因子として考えられている母親の年齢、母親の妊娠前体重、母親の分娩回数、母親の喫煙歴、母親の教育歴、世帯収入、母親の食習慣、居住地域の影響も考慮した上で、母体血中のPFAS濃度と機能性便秘の有無との関連について、多重ロジスティック回帰分析(※5)で検討を行いました。
機能性便秘は3歳時点では11.3%の子ども、4歳時点では9.8%の子どもで見られました。検討の結果、母体血中のPFOA濃度と4歳時点の機能性便秘の有無との間に正の関連が見られましたが、その他のPFASと4歳時点の機能性便秘の有無との間に関連は見られませんでした。また、対象としたすべてのPFASと3歳時点の機能性便秘の有無との間に関連は見られませんでした。
4.今後の展開
母体血中PFOA濃度と4歳時点の機能性便秘の有無との間に正の関連が認められましたが、本研究はPFOAが機能性便秘の原因になるかどうかを直接調べたものではありません。また、PFOAが機能性便秘の原因になると考えられる十分な説明もできていません。本研究で見られた関連については慎重に解釈する必要があり、今後の研究が必要です。
5.用語解説
※1 エコチル調査:環境省が企画立案し、2010年度から開始された全国で約10万組の親子を妊娠中から調査している「子どもの健康と環境に関する全国調査」の略称です。
6.発表論文
題名(英語):Associations between maternal exposure to per- and polyfluoroalkyl substances and functional constipation in children at 3 and 4 years: The Japan Environment and Children’s Study
著者名(英語):Kohei Hasegawa1, Yuji Inaba2,3,4, Shoji Saito5, Takumi Shibazaki5, Margareta Laurence Pisonningtyas6, Shoji F. Nakayama7,Michihiro Kamijima8, Teruomi Tsukahara9,1, Tetsuo Nomiyama1,9 and the Japan Environment and Children’s Study (JECS) Group10
1長谷川航平、塚原照臣、野見山哲生:信州大学医学部衛生学公衆衛生学教室
2稲葉雄二:信州大学医学部 小児環境保健疫学研究センター
3稲葉雄二:長野県立こども病院神経小児科
4稲葉雄二:長野県立こども病院生命科学研究センター
5齋藤章治、柴崎拓実:信州大学医学部小児医学教室
6Margareta Laurence Pisonningtyas:ディポネゴロ大学医学部
7中山祥嗣:国立環境研究所エコチル調査コアセンター
8上島通浩:名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学分野
9塚原照臣、野見山哲生:信州大学医学部産業衛生学講座
10グループ:エコチル調査運営委員長(研究代表者)、コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンターから構成
掲載誌: Environmental Health and Preventive Medicine
DOI: 10.1265/ehpm.25-00399
URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/ehpm/31/0/31_25-00399/_article
7.問い合わせ先
【研究に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所
エコチル調査コアセンター
次長 中山祥嗣
電子メール:jecs-pr(末尾に”@nies.go.jp”をつけてください)
信州大学医学部衛生学公衆衛生学教室
助教 長谷川航平
電子メール:koheih+20260406(末尾に”@shinshu-u.ac.jp”をつけてください)
【報道に関する問い合わせ】
信州大学総務部総務課広報室
電子メール:shinhp(末尾に”@shinshu-u.ac.jp”をつけてください)
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報対話室
kouhou0(末尾に@nies.go.jpをつけてください)
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