環境に関するドイツでのフィールドワーク
氏名:吉田 優泉
期間:2025年2月15日~3月10日
共通教育のゼミの一環としてドイツに3週間研修に行きました。このゼミは環境先進国であるドイツで行われている環境教育や環境保護に関する活動を学ぶものです。このゼミでの私のテーマは「衛生と環境の共存」ですが、広い意味で「環境」に関わることを視察してきました。
研修の日程
2025/2/15~2025/3/10
2週間 語学学校 レーゲンスブルク
3日間 個人視察 ドレスデン
4日間 団体視察 ハノーファー
※語学学校中はレーゲンスブルクを拠点に周辺を視察
視察先
Umwelt Energie Bildungsyentrum
Museum Wald und Umwelt der Stadt Ebersberg 森と環境の博物館
ドイツ衛生博物館
TU Dresden ドレスデン工科大学
コニカミノルタ
Schulbiologiezentrum 学校教育センター
ハノーファー市気候保護局
Kronsberg クロンスベルク
【Umwelt Energie Bildungsyentrum(写真1)】
エネルギーに関する施設で、省エネやエコな行動などについてゲーム感覚で学べる施設です。ゲームを通して自分の環境リテラシーを得点化でき、どこを改善すればよいのか、何に気を付ければよいのかを知ることができました。
【Museum Wald und Umwelt der Stadt Ebersberg 森と環境の博物館(写真2)】
エバースベルクにある自然の中に建てられた小屋のような施設で、光害に関する展示や動植物との共生をテーマにした展示がされていました。光の色や向き、明るさを変えるだけで光害を抑えることができ、野生動物への影響を減らすことができると学びました。また、ちょうどこの日に博物館で誕生日会を催している子供がおり、ドイツの子供にとって博物館は身近な存在であることを実感しました。
【ドイツ衛生博物館(写真3)】
ドレスデンにある大きな博物館で、主に人体に関する展示がされています。かなり本格的な展示が多かったです。日曜日に訪れましたが、子供連れの家族が多く、休日に美術館や博物館を訪れる文化を目の当たりにしました。ドイツの店の多くは日曜日が休みなので、このような施設に行くということです。
【TU Dresden ドレスデン工科大学(写真4)】
信州大学医学部の提携大学であるこちらの大学でお話を聞かせていただきました。
自転車やバイク、路面電車での通勤通学を推進しており、学内には空気入れや修理用の工具がおかれていました。学生が無料で使えるレンタル自転車もありました。また、医学部で所有する自動車はすべて電気自動車だそうです。お話を聞いた中で印象的だったのは、裏紙を幼稚園に渡しているというものです。研究内容などが書かれていても子供では理解できないため、情報漏洩の心配はしていないとのことでした。もう一つ印象的だったのは学内の人が自由に持ち帰れるブックシェルフとグッズシェルフです。不要になったものをこのシェルフに持ってきて使ってくれる誰かにつなげる取り組みで、本はもちろん子供のおもちゃやコップなどもおいてありました。信州大学で取り入れたら、不要になった教科書等を後輩につなげることができると思います。
信州大学と同じようにエレベーターキャンペーンという名前で階段の利用を促す活動を行っていました。最初は効果があったようですが徐々に意識する人は減ってしまったと聞きました。見慣れてしまうと意識が薄れてしまうため、常に更新していかなければならないともおっしゃっていました。
【コニカミノルタ】
印刷機やカメラなどを手掛ける企業で、会社での環境のための取り組みをお聞きしました。商品の納品・設置時に出る梱包材や空のカートリッジを自社に持ち帰りリサイクル・リユースをしているそうです。他企業のものであっても下取りし、分解・リサイクルします。自社で再利用しないものは金属材として売却します。この分解の作業は障がい者の方が行っています。処分していたものをリサイクルすることでゴミの量を10分の1程度にすることができたそうです。
【Schulbiologiezentrum 学校教育センター(写真5)】
日本でいう小学校や中学校に動植物や実験器具を貸し出したり、小中学生が実際に来て環境について学んだりする施設です。子供たちが自然を身近に感じられるような授業が行われます。庭では植物の植生を観察できるほか、木の葉やプラスチックなどがどのように分解されるかを視覚的に理解できるプランターがおいてあります。ドイツでは子供のころから環境に対して高いリテラシーが培われていると思いました。
【ハノーファー市気候保護局】
ハノーファー市の気候保護を管轄する施設です。原子力に対して強い反対の姿勢をとっているハノーファー市でエネルギー使用の削減や再生可能エネルギーへのシフト、エネルギーの効率化についての仕事をしているそうです。10個のトピックを軸として市としての環境政策を進めています。デジタル化が進んだことで紙の使用量は削減されましたが、その分コンピュータやAIなどに電力が使われるようになっている現状に取り組んでいるそうです。また、温室効果ガスの60%を企業やビジネスが排出していることからそれらに対して提案や相談を行って、経済と環境の両立を図っています。
【Kronsberg クロンスベルク】
2000年の万博をきっかけに開発された町でエコロジカルな住宅地が並んでいます。雨水が効率的にため池に流れるようになっていたり、屋上に芝生のような植物が植えられていて日差しで建物が暑くならないようになっていたり、季節によって調光できる天井があったりして自然環境をうまく使いながら生活できる住宅地です。こうすることでエネルギー消費をかなり抑えることができているそうです。
【視察を終えて】
視察を終えて思ったことは、ドイツでの環境への取り組みや決して大がかりなことばかりではないということです。原子力発電をやめたように国が動かすものもあれば、エレベーターキャンペーンのように一大学が行うものもあります。ドイツではこの小さな努力や工夫を決して無駄だと思っておらず、個々の力が地域や国を変えると考えているところに感銘を受けました。
また、ドイツの大事な特徴として、可視化が行われていることが挙げられます。博物館や美術館が至る所にあり、間近で見たり、触ったり、体験したりできることで理解がしやすくなっていると感じました。現状を知ることは何かしなければならないと思うきっかけにもなるので、自ら情報を取りにいかなくても自然と目に入ってくる形で多くの人が現状を知れるような工夫が必要だと思いました。
実際にドイツに行ってみて、日本よりも環境や健康への意識が高いと感じたところは多くありましたが、一方で路上タバコやポイ捨てが多いなど、日本の方が優れていると感じた一面もありました。ドイツで行われている活動をそのまま日本で行うのではなく、日本人に合うように応用して行うことでより効果が得られるのではないかと考えます。
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【写真1: Umwelt Energie Bildungsyentrum】 レーゲンスブルク大学近くの住宅地にあります。 エネルギーに関する施設で、ゲーム感覚で学ぶことができます。授業で使われることもあるそうです。 -
【写真2: Museum Wald und Umwelt der Stadt Ebersberg 森と環境の博物館】郊外にあり、裏手には森が広がっています。 火事で一部が焼けてしまい、現在リニューアル中です。 -
【写真3: ドイツ衛生博物館】 ドレスデン市内にあり、親子が多く訪れていました。主に人体に関わる展示がされており、かなりリアルで本格的な展示です。 -
【写真4: ドレスデン工科大学内のブックシェルフ】 学内の人が自由に持ち寄り、持ち帰れます。 本以外にもおもちゃや日用品用の棚もあります。 -
【写真5: Schulbiologiezentrum 学校教育センター】授業の一環で子供たちが体験学習にきます。 環境学習のための道具などの学校への貸し出しも行っています。