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子宮がん

子宮頸がん・子宮体がんについて、その症状と 一般的な治療法を説明します。がんは早期に発見して治療をすることが大切です。定期的にがん検診を受けたり、産婦人科で検査を受けることによって、がんを早い段階で発見することができるのです。

子宮頸がん

子宮の入り口の部分(子宮頸部)にできるがんで、子宮にできるがんのうち、約90%は子宮頸がんです。子宮頸がんはすでに治療法が確立されており、がんの中では治りやすいがんといえます。

子宮頸がんの診断~子宮がん検診を受診しましょう

子宮頸がんは、特殊な例を除いて、必ず早期に発見できるがんです。
「子宮がん検診」では、子宮頸部の表面から細胞を拭い取り、顕微鏡でがんの疑いの有無をチェックします。この段階で発見できれば、より簡単な方法で治療できます。ですから「子宮がん検診」を定期的に受けることがとても大切なのです。
現在どの都道府県でも、20歳以上の女性は1、2年に一回この検診を実費で受けられる制度があります。検診の結果は2~3週間以内にわかります。

A.子宮頸がんの症状

子宮頸がんの症状として、月経以外の異常な性器出血、性交後の出血などがあります。
しかし、全く症状のない時点で、細胞診によりがんの前段階の変化が発見されることも多いので、症状がなくても「子宮がん検診」を定期的に受けることが大切です。

B.精密検査

「子宮がん検診」で精密検査が必要といわれた場合、まずコルポスコープで子宮頸部を拡大して観察します。さらに、病変が見つかれば、その部分の組織の検査を行います。コルポスコープで見にくい部位に病変ができやすい場合は、「頸管内掻爬」といって奥の方から組織をとることもあります。
精密検査結果が出るまでは約2週間かかり、これによってがんの進行度合いをみきわめ、治療方針が決められます。

子宮頸がんの診断の結果は「子宮頸部の異形成」「子宮頸がん0期」「子宮頸がん」の3つに分かれます。
「子宮頸がん0期」というのは、がんの細胞が子宮頸部の表面をおおう粘膜にだけ存在している状態です。がん細胞が粘膜の下まで浸潤してしまう、本当の意味での「子宮頸がん」に至るまでに、ふつう0期の状態のまま数年を経過しますから、毎年「子宮がん検診」を受けることにより発見できます。
「異形成」のうち程度の軽いものは、治療せずに外来通院で経過を観察します。2~3ヶ月ごとに検査をするうちに治ってしまうことも多いのです。「異形成」の高度のものと「子宮頸がん0期」は 治療が必要ですが、0期がんの段階であれば、100%の治癒が期待できます。

C.子宮がんの治療法

  1. 治療前の検査
    子宮頸がんをそのまま放置すると、子宮頸部から周囲の組織にがんが転移します。
    そこで、治療をはじめる前に、子宮頸がんがどの程度進行しているか、また治療にさしつかえるような他の病気がないかどうかをみるために、いろいろな検査をすることになります。一部の検査では少し苦痛を伴うことがあります。しかしこれらの検査は、最も適切な治療法を決めるために必要なものなのです。
  2. 手術療法と放射線療法、化学療法
    子宮頸がんの治療は、手術療法と放射線療法、化学療法の3本柱で成り立っています。これらの治療を組み合わせて治療をすすめます。どの治療法が最適であるかは、患者さん個人個人によって異なります。

◇手術療法

<頸部円錐切除術>0期のがんで、患者さんが今後も妊娠・出産を希望する場合に行う手術です。腰椎麻酔をして膣の方から、子宮頸部の病変した部分を切り取る方法です。
したがって子宮を摘出せず、お腹を開くこともありません。

<単純子宮全摘術>0期のがんや、がんが子宮頸部から外には出ていない段階の子宮頸がんに対して行う手術で、開腹手術によって子宮を摘出します。手術中に輸血を必要とすることはほとんどなく、術後の障害もまずありません。

<広汎子宮全摘術>子宮頸がんを根本的に治療するための手術です。がんが拡がっていく道筋を全て摘出するため、子宮だけでなく、子宮を横から支えている基靱帯、膣の一部、ふつうは卵巣・卵管も摘出します。

◇放射線療法
大部分の子宮頸がんには放射線療法が非常に有効です。
いろいろな理由で手術ができないから放射線療法を選択するというだけではなく、放射線療法だけでも十分治癒が期待できるのです。 手術後の追加治療として放射線療法を行う場合は、ふつう骨盤の腔内全体に放射線を照射します。放射線療法のみで治療を行う場合は、れに加えて膣内や子宮腔内に局所的に放射線を照射します。

子宮体がん

子宮にできるがんのもう一つのタイプで、子宮体部という子宮のうちでも妊娠をつかさどる部分にできるがんです。子宮体部の内側は月経周期で剥脱する粘膜におおわれていて、子宮体がんはますこの内膜面にできます。 日本では子宮体がんは子宮頸がんの8分の1から10分の1くらいの比率ですが、近年確実に増加してきています。子宮体がんの多くは閉経後の女性に発生します。

A.子宮体がんの症状

子宮体がんの多くは閉経後の女性に発生し、症状としてはまずがんからの異常な出血があります。30歳以上の女性が毎年受けることができる「子宮がん検診」は、子宮頸がんを早期発見するためのものですが、子宮体がんはふつうの「子宮がん検診」では見つかりにくいがんです。ですから、閉経後に膣からの出血があれば、この子宮体がんのことを考えて産婦人科を受診する必要があります。
また、月経の順調な方でも異常な出血があった場合や、いわゆる更年期で月経が不順になった場合にも、子宮体がんでないことを確認しておくため、診察と検査を受けましょう。もしも子宮体がんと診断された場合でも、このがんはそれほど進行していないことが多いですから、治癒をめざして治療を受けることが大切です。

B.子宮体がんの診断~どんな検査をするのか

内膜細胞診
子宮の奥の内膜面から細胞をとっておこなう検査です。

内膜組織診
子宮の内膜の組織を子宮鏡という器具を用いて直接観察し、子宮体がんの疑いのある 部分を採取する検査法です。子宮体がんの診断に最も大切な検査で、この検査を行えば子宮体がんを見逃すことはありません。

C.子宮頸がんの治療法

組織検査で子宮体がんであることがはっきりすると、治療のために入院します。
治療をはじめる前に、子宮体がんのタイプや進行状況などをみるために、いろいろな検査をすることになります。これらの検査は、最も適切な治療法を決めるために必要です。
子宮体がんの治療としては、ふつうまず手術を行います。子宮体がんの大部分は、がんが子宮体部にとどまっている段階のもので、治癒率は高いのです。この段階の子宮体がんの場合は、<単純子宮全摘術>を行います。子宮頸がんと違い、子宮体がんは卵巣・卵管に近いところにできるので、卵巣・卵管は両方とも摘出しなければなりません。 子宮体がんが進行して頸部の方まで進展している場合は、<広汎子宮全摘術>を行います。
手術で摘出した臓器を調べたうえで、放射線療法などを行うかどうかを決定することになります。