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妊婦健診について

妊娠初期

流産しやすい時期とされていますが、流産の大半は、胎児に異常があるか、胎児と母体との結びつきがうまくゆかないのが原因なので、そうしたことがなければ出血などがあっても必ず流産するとは限りません。ただし、出血がある場合は、必ず受診しましょう。

赤ちゃんのことを大切に考えて、いろいろなことに注意を払った生活は重要ですが、心配ばかりしていていては赤ちゃんも気が滅入ってしまいます。妊娠したことに素直な喜びを感じて過ごしましょう。

妊娠9週頃になると胎児の形もはっきりしてきます。心臓の動きはもちろん、頭と胴体がしっかり区別でき、手足も見えてきます。ここまでくれば、妊娠初期の流産の心配はほとんど無いと思ってさしつかえありません。

妊娠中期

出血、激しい嘔吐、激しい腹痛、尿の減少、むくみの増大、体重の急激な増加、などの症状を自覚した場合には、定期健診の時期でなくても産婦人科を受診しましょう。

多胎妊娠、高血圧、尿の蛋白や糖が陽性、ひどい貧血、前置胎盤、切迫早産、などを指摘された場合、詳しく状態の説明をうけていただき、適切な指導や管理を受けることが必要になります。

切迫早産

切迫早産は、満期でない時期(妊娠22週から妊娠36週)に、分娩の時におこる現象、つまり陣痛のように子宮が頻繁に硬くなったり(おなかが張ったり)子宮の出口が柔らかくなってしまう状態です。
これらの症状は、頻繁でなければ正常の妊娠経過においてもみられるものであり、実際に早産になってしまうか否か判断が難しいこともあります。自分で判断せず医師に判断をあおぎましょう。
症状が軽い場合、子宮の収縮を抑制する飲み薬を服用していただき、家で安静にして様子をみることもありますが、安静にしていても症状が良くならない時、医師が診察して子宮の出口が前回に診察した時より開いてきている時などは入院していただき厳重に管理する場合があります。

妊娠後期

妊娠後期にもっとも注意しなければならない疾患として、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)があげられます。

妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)

  • 妊娠高血圧症候群は妊娠8ヶ月(妊娠28週)くらいから出現することが多く、高血圧・蛋白尿が主な症状です。原因はいまだに解明されておりませんが、お母さんや赤ちゃんに様々な悪影響を生じさせる可能性があります。
  • 胎児や胎盤の血液循環などに影響を及ぼして機能を低下させ、胎児の発育が悪くなったり胎盤の早期剥離をおこしたり、産後に高血圧症や蛋白尿を残すこともあります。重症になった場合には、専門医で適切な治療が必要となります。
  • また、太りすぎは、妊娠高血圧症候群 になりやすく、難産になったり、帝王切開率が高くなったり、お産の後に肺の血管が詰まって息ができなくなったり(エコノミークラス症候群)と、決して良いことはありませんので、極端な体重増加には注意しましょう。(妊娠前の身長や体重で、 妊娠中に増えてもよい体重は個人差がありますが、おおまかにいうと全妊娠経過での体重増加を10kg以下にした方が妊娠中のトラブルが少ないとされています。妊娠前から 太っている人はこれより厳しめに、やせている人は甘めに考えてください。)

お産の始まり

  • 妊娠37週(予定日の3週間前)からは、いつ生まれてもおかしくない時期になります。お産の始ま りを告げるサインはおしるし(産徴;少量の粘調な出血)、陣痛、破水の3つですが、入院のタイミ ングは陣痛か、破水が起きたときです。陣痛が来たり、破水 した感じがあったら、いつでも連絡し て来院してください。
  • 場合によっては分娩誘発をすると言われて心配になる妊婦さんもいるようです。その時は、まず 担当の先生から分娩誘発の必要性について、よく説明を聞いてください。お産はお母さんが主体で おこなうもので、何らかの不安や疑問を抱いたままでのぞむべきではありません。お母さんが十分理解した上なら、きっとよいお産ができます。

分娩誘発

子宮収縮剤を使用して陣痛誘発を行うことを分娩誘発とよんでいます。分娩誘発は、放っておくとお母さんや赤ちゃんが危険な状態に陥ると判断される時に行います。

○いつ生まれてもよい時期に破水したが、なかなか陣痛が発来しない時。
○予定日を超過して放っておくと過期産になりそうな時。
○妊娠中毒症などで母体が妊娠に耐えられないと判断した時。
○陣痛が遠のいて微弱な時。など

陣痛誘発を開始した場合はお母さんの全身状態、子宮収縮の頻度や強さ、赤ちゃんの元気具合を胎児心拍数モニターという機械で監視します。また診察を繰り返して分娩の進行状況を観察することも大切です。これらの条件が満たされれば、お産は安全におこなわれるものと思います。

右の写真は、外来で胎児心拍数モニターを行っているところです。赤ちゃんが元気にしているかどうかを確かめています。

さあいよいよ出産です