ヒトの運動は脳神経系・筋骨格系が環境と相互作用することによって生み出されます.すなわち,様々な要素が絡み合う複雑なシステムの上に成り立っていると言えます.本研究室では「システム設計的アプローチ」によって,このシステムを少しでも解明することで学術的意義・社会的意義・産業的意義を果たすことを目的としています.
「システム設計的アプローチ」は要素の抽出,モデル化,パラメータ群の設計によりシステム全体のパフォーマンスを向上させる方法論です.これを医学(生理学)と連携し計算機科学を駆使して達成していきます.同時にヒトへの被験者実験も欠かせないものです.
一例として,ヒトの姿勢制御・歩行を表現する計算機モデルを挙げます.ヒトの加齢や障害による運動機能低下を予防するためには運動システムの理解が必須となります.そこで運動システム解明のために計算機モデルを構築します.モデルでは下肢・体幹だけでも70筋を有し,これらを同時に制御する必要があるため最適化も大規模なものになります.段階的な最適化などを用いてこの問題を解決し,高齢者や障害者の如何なるパラメータが転倒に繋がり得るかを,立位・歩行・歩行開始動作・歩行停止動作などを対象に考察しています.