令和7年05月26日 取材
令和7年4月1日に教育学部長に就任された西一夫学部長にDE&I推進センター長が教育学部における男女共同参画の現状等についてインタビューをしました。
教育学部の男女共同参画の現状と課題
関DE&I推進センター長(以下「関」):教育学部長へのご就任おめでとうございます。教育学部における男女共同参画の現状を教えてください。
西学部長(以下「西」):できるだけ隔てなく皆さんに職場で勤務していただけるような環境づくりを心掛けています。教育組織としては若干女性の比率がまだ十分でないとの認識を持っていますが、今の事務長も女性で、事務の方に関しては比較的バランスが良いと思います。やはり男女のバランスが取れていて、様々な相談事に乗ることができる環境になると思います。
関:女性教員に関しては、分野によって偏りはありますか。
西:数学では女性教員がいたり、家庭科では「住居」の領域があり建築専門の男性教員がいたりして、偏りなく非常にバランスよく構成されていると思います。
関:女性教員が応募しやすい取組はしていらっしゃいますか。
西:基本的に能力が同列だった場合、女性を優先的に採用するという条件をつけての支援はあります。
関:今後取り組んでいこうと考えていらっしゃることはありますか。
西:男性にしても女性にしても今は比較的若い教員が増えてきているので、男性でも積極的に育児休暇が取りやすい環境を作っていくことです。昨年も、夏季休業中に授業に影響が出ない範囲で男性教員が育児休暇をとった事例もあります。家庭を自分たちで作っていきながら、職場でも生産性をあげてもらえる環境が大切だと思います。
関:プライベートでも仕事でも男女同様に働けて家庭も子育ても男性が女性がということではなくバランスよくということになります。それにはやはり西先生のリーダーシップが重要になってきます。先生がそのようなお気持ちでいらっしゃると組織の教員たちも育休を取りやすいですね。
西:家庭を大切にしながら、安心して働き、そして教育にも力を注げる。そのような環境をこれからも整えていきたいです。
関:若手の教員の割合は増加していますか。
西:退職後の教員の補充は、どうしても助教や准教授のポジションで、比較的30代の教員が多くなっています。今年度末には5人が一度に定年を迎えます。女性教職員と、うまく取りまとめてきた方が定年を迎えるため、悩ましい状況もありますが、環境を整備し、人員構成を工夫し、業務の見直しと改善を行うこと、さらに学生への教育の質を低下させないようにするなどの心がけが必要です。
関:課題はどのようなところにありますか。
西:男女比では男性優位な環境がまだずっと続いています。教育学部は様々な学問領域の人がいて、研究の総合百貨店と言えますが、そのような中で、研究領域にとらわれないで、ある程度男女比を考えていきたいと思います。数年前から理系の女性研究者を増やしていきましょう、学生を増やしていきましょうと力を入れた成果が徐々に出てくると思います。若い研究者を登用できるような機会を考えるべきだと思っています。
関:教える側も考え方が変わっていかないと、なかなかその次の世代は育っていかないですね。
西:そうですね。教員養成学部では小中学校の先生になりたい学生が多く、学生の男女比でいうと6割以上が女子です。学生相談員の制度はありますが、男性の教員に相談しにくい話題もあるでしょうし、学生支援の面で一定数の女性教員がいないと学生対応が難しいという問題があります。
関:反対に男性の場合はどうなのでしょう。女性の指導員の先生でも話しやすいものでしょうか。
西:話題にもよると思いますが、男性の相談はあまりありません。逆に女子学生の方が圧倒的に多いです。真面目で完璧主義の学生が多く、本当に大丈夫なのかという不安を要因として持っている学生は一定数いるのが現状です。女性カウンセラーが2人いらっしゃるので、心理的なケアは多分スムーズだろうと思いますが、普段の学校生活のことなどは、各領域に学生相談員を置いていますが、やはり女性の割合が低く、全体として男性が多くなっています。女子学生に対しては、領域にとらわれないでオールラウンドに相談できる呼びかけも必要だと思っています。
関:学生の悩みも最近は多岐にわたって様々です。
西:話題によってはなかなか聞く側も理解できないところもありますが、できるだけ柔軟にカウンセラーとも調整をしながら、学生に寄り添えるように配慮をしています。
ワークライフバランスについて
関:教育学部では今後ワークライフバランスの推進も含めてどのような取組をなさっていきたいと考えますか。
西:やはり働きやすい環境を作っていくことです。家庭と職場の両立が重要になるので、男女問わずに、家庭と職場のバランスをうまく取れるような環境づくりを心がけていきたいです。小さいお子さんがいる方には、奥さんとやりくりをしながら勤務時間の調整をうまくしてくださいとお願いをしています。そういうところが一番大切だと思います。
関:風通しがいいですね。
西:風通しをよくしていくことが大切だと思います。
関:先生ご自身がプライベートで心がけていらっしゃることはございますか。
西:仕事とプライベートの調和を大切にして、家では仕事をしないようにしています。書斎もありますがそこでは好きなことをして、大学の運営や業務はしません。大学で完結させるようにしています。メールには発出時間を設定し、休日には発出しないようにしています。
国語教育と若手支援への取組
関:大学で勤務する前は理系が多い男子校で勤務されていたとのことですが、国語を専門に教えられていていかがでしたか。
西:文系の大切さは理系でも通じます。ちょうどこちらに伺ってから2年後くらいから長野工業高等専門学校でも7年間非常勤をしていたことがありました。その時に世界で活躍するエンジニアには日本語のスキルがしっかりないと立派なエンジニアにはなれない。考えるのは日本語であって、母語を鍛えないとだめだ、だから国語を勉強するのだという話をしていました。
学生に国語を勉強する意義を話す時に、言葉で自分の思いを伝えたり、相手の考えを理解したりするのは全部言葉であり、ロジックを組み上げるのが説明的な文章、心のひだを豊かにしていくのは文学的な文章だと説明をしています。
関:若手支援への取組を教えてください。
西:学生の中にはピアノで入賞経験があり、卒業記念に自らリサイタルを企画するなど、一人ひとりが努力を重ねています。私たちはその姿を支援し、学生の挑戦を支えることも重要です。若手を育て男女共同参画にもどんどん力を入れていきたいです。教育学部の場合は研究職に進んでいかれるかどうかわからないですが、若手の方が自分の研究分野にしっかりと興味を広げてさらに追求していけるような学部にしていけたらと思います。
関:本日はありがとうございました。