令和5年05月11日 取材

令和5年4月1日に病院長に就任された花岡正幸病院長に関男女共同参画推進センター長が医学部附属病院における男女共同参画の現状等についてインタビューをしました。

信州大学の医学部附属病院における男女共同参画の現状

関男女共同参画推進センター長(以下「関」):病院長へのご就任おめでとうございます。本日はよろしくお願いします。まず、医学部附属病院の男女共同参画の現状について教えていただけますか。

【医学部附属病院】花岡 正幸 病院長

花岡病院長(以下「花岡」):現状はかなり女性の比率が多くて、共同参画という意味では、信州大学のトップを走っていると思います。

関:女性はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。

花岡:医師は男性が多いですが、看護部は圧倒的に女性が多く部署によってバラツキがあるものの全体としてみると女性の方が多いです。信州大学もそうですが、長野県は医師不足です。医師不足が解消され人員が豊富にいるという状況ができれば、ローテーションができるので、おそらく現在のような長時間労働がなくなり、女性も働きやすいと思います。また、看護学部、看護学科は男子学生が増えています。昔は圧倒的に女性の職場でしたが、男性の看護師も増え、病棟の師長も男性になりつつあり、これからも男性が進出していくと思います。医学部は女子学生自体が3割、4割と少ないです。働き方のサポートとしては出産のための休暇・休職、育児のための休職は最大限に取っていただくようにしています。昔は妊娠・出産を契機に辞めてしまう女医さんもいらっしゃいました。今ある制度を最大限に生かして辞めずに続けていただき、復帰した際には辞める前と同じポジションで働いてもらうことに尽きると思います。

関:ちなみに一旦辞められてから復職した方はいらっしゃいますか?

花岡:一旦辞められた方は、復職されてもフルタイム勤務ということではなく、短時間雇用で日中だけの勤務や、病棟をもたず外来だけの勤務等十分配慮は出来ていると思います。

関:医師や看護師等のメディカルスタッフは信大病院全体で何人いらっしゃいますか。

花岡:約2000人です。

関:2000人の方には様々なスタイルの働き方があると思いますが、先生ご自身はその辺はどうしたらよいとお考えですか?

花岡:様々な職種があり縦割りになりやすいので、連携を深めていくことが重要ではないかと思います。多職種連携が一つのキーワードなので、周りの組織と連携してくださいと話しています。

関:チームワークに尽きるということですね。

花岡:課題は、女性の管理職が非常に少ないことです。

関:管理職になりたい女性が少ないということですか?

花岡:キャリアアップしていく過程で、どうしても妊娠・出産・子育てがあり、男性の業績の方が上がります。管理職は業績が重視されますから、女性は不利になりがちです。

関:信大では女性研究者の支援や、意識啓発の取組をしており、管理職につくことへの意識の男女格差をできるだけなくしていくための取組をしています。もう少し推進していくと変わってくるのかもしれませんね。時間はかかりそうですけど。

花岡:優秀な女性を何とか活かしてあげられないかと思います。時間はかかるのかもしれませんが、一方で早く結果を出さなければといったジレンマもあります。

関:女性が増えてくればその次に続く方々が目標とします。良い方向に向いていくのではないかと思います。やる気のある女性は「あの人のようになりたい」と上を目指していただくことが大事ですから。男女共同参画推進センターではロールモデル集を出していますが、研究者の方がメインで、なかなか病院内で働く方を取り上げていないので、これからはそういう方からもお話を聞いていきたいです。そして多様な生き方があることを知っていただきたいです。

今後の取り組みに向けて

関:今後の取り組みに向けて、先生からアピールすることはございますか?

花岡:特に看護師のリカレント教育が大事だと思っています。一旦職場を離れられた方がまた現場に戻って活躍していただくことが非常に重要な課題だと思います。一度離れるとなかなか追いついていけず、本人も不安になり戻って来られないことがあるので、座学よりも現場に出ていただいて、今の現役の看護師と一緒に働き、実地・実践していただくシステムができればよいと思います。

関:そうした取組事例、先生が理想としている病院・地域はございますか?

花岡:看護師の場合は、信大病院ではなかなかそこまでいっておらず、看護協会などで相当取り組んでいると思います。

関:潜在看護師さんをもう一度現場に戻す等、熱心にやってらっしゃいますね。

花岡:特にコロナ時、看護師が不足している時にいかに潜在看護師を戻すかがクローズアップされましたが、これからも必要だと思います。医療機関はこれからが大変です。

関:だからこそ、むしろ潜在看護師にどんどん復帰していただきたいですね。5月8日以前とは医療機関の様子が変わりましたか?

花岡:患者数がリアルタイムで分からないことと、基本的な医療費が自己負担ですので、検査するのにお金がかかるから検査をやめておこうとなってきています。また、これからの構想は、長野県と共同で、旭町庁舎に長野県医学教育研修センターを作り学生や研修医にシミュレーション教育をして、診療所の先生まで含めて生涯にわたり医療者を教育できるようなシステムを作りたいと思います。人生100年時代ですし、資格があれば定年退職のない職業ですので、そのような点を活用して、行政・住民を巻き込んで人を育てる中で、女性も進んで活躍できると思います。令和6年度から医師の働き方改革が始まり、残業の時間が大幅に制限されます。この改革が始まるのを一つの契機として、時間外の労働時間を大幅に圧縮し、その中で勤務時間内はしっかりと仕事をしていただき、それ以外の時は充分リフレッシュして家庭サービスもする、そのような形に近づけられれば良いと思います。それには、患者さんや家族や住民の理解と協力も必要です。

関:医療を提供する側とされる側の双方の理解がないと、改善は進まないですね。理解を深める、意識を変えることですね。

どのような病院を目指すか

【医学部附属病院】花岡 正幸 病院長

関:どのような病院を目指していきたいか等、理想やメッセージはございますか。

花岡:医療の世界は男女で大きく差がつく場面はそれ程ないので、女性にとっても働き甲斐のある職場だと思います。診療に関してはもちろんですが、大学ですから研究、教育も重要であり、こちらの方面にもぜひ進出していただきたいと思います。優秀な女性が能力を遺憾なく発揮できるように、環境を作るのが私の務めだと思いますので、これから頑張っていきたいと思います。

関:先生のお力になれるように、男女共同参画推進センターでも様々な取組によってサポートできるようにしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。