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卒業生からのメッセージ

卒業生からのメッセージ

「懐かしい時の場所」として「松本」

投稿者名 來田歩 | 投稿日 09年07月07日 | 理学部 平成3年卒

「懐かしい時の場所」として「松本」

都会の高校にいって、田舎育ちの僕は、すぐ後悔した。だから、大学は、田舎に行こうと思った。さらに、背伸びをするより、ツーランクくらい落とした大学で、唯我独尊、ガラパゴス諸島で、独特な進化をとげるのを夢見た。僕が、僕であることの独特(オリジナリティ)。高校時代、僕は「変人」と言われていた。自分でも、そう思わされていた。愛知県の管理教育には、辟易していた。「河合塾」で、全共闘の牧野先生にであった。そして、信州大学に入学した。大半は、県外から来ている半径4km以内に、下宿生がいる、ような松本キャンパスには、それこそ、「変人」だらけだった。「変人」が、たくさんいれば、僕も、「変人」では、なくなる(たぶん)。西は来たアルプス、東は美ヶ原高原、四方山に囲まれた松本は、まさに、「ガラパゴス」であった。そこには、「教養部」という、ユニークな「場所」があった。小松和彦先生が、ちょっと前まで、いたという。ニーチェの平木幸二郎先生、農学の玉井先生、美術の北澤先生、物理(反核)の三輪先生、科学史の坂本先生、超領域の山本哲士先生、宇野経済学もあった、ラカンの佐々木先生や、認知心理学を教えてくれた岡本先生がいた。そして、エントロピーの勝木先生。信州大学の「教養部」は、法人化され、実利実益を求められる今の大学にとっては、「古きよき時代」となってしまった。そこには、「教養主義」というものがあったと思う。僕は、そこで、僕のオリジナリティを育んでいけた。寺田寅彦先生のようになりたかった、「雪は空からの手紙」の中谷宇吉先生に憧れた、近角先生が結成したようなロゲルリストという集団が作りたかった。それが、「信州大学物理研究会」である。会誌を作った。「Rem」である。レム睡眠のレムである。つまり、夢見心地の、「懐手でして宇宙見物」みたいな。物理学科の先生方は、そのような活動を、暖かく見守ってくれたような気持ちがある。松本は、自分の「懐かしい時の場所」である。この間、銀嶺祭に行った。物理学科の学生にとって、物理ネタで盛り上がれる「メソン」という居酒屋が、なくなっていた。信州大学は、いつまでも、「懐かしい時の場所」で、あってほしいと思う。