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卒業生からのメッセージ

卒業生からのメッセージ

信大夜間部特別教室「まろ」の存在

投稿者名 下沢(旧姓浅輪) 正典 | 投稿日 08年12月23日 | 理学部 平成9年卒

松本市内の中町(飯田町)に、「まろ」という店がある。店主は公家出身ではないとのことだが、京都生まれの信大OBだ。アンポで賑やかな頃だったらしい。小生は1990年度入学で、入学後すぐから顔を出しているので、彼是20年近くの付き合いになる。先輩にまろとは失礼だが、愛情がこもっているので(?)いつも通りまろといわせてほしい。学生当時は店内に一応メニューが掲示されていたが、ここのところメニューの掲示すらない。座るとまろのお任せになる。お任せというと立派なコース料理を想定するが、決してそうではない。冷蔵庫のなかにあるものが、賞味期限の順にでてくる感じに近い。いまどき珍しい商売方法といっていいだろう。トレードマークの白い下着シャツ姿も相変わらずだ。一体やる気があるのかね、と疑いたくもなる。ところが、である。大学生活を振り返ったとき、まろの存在は欠かせない。いくつかの選択肢があり、自力で2つには絞れたが、どうしても右か左か選べないような岐路に立つと、必ず「ようっ。」と暖簾を潜っていた。都合7年間信大にお世話になっているが、まろに座った回数だけ岐路に立っていたともいえる。恥ずかしい話だが、涙を見せたことも何度かあった。家に帰ってからもおさまらなかった。また、大喧嘩に発展しそうな場面もあった。若い力を真正面から受け止めてくれた。兎に角、まろの判断は聞いていて納得感がある。判断理由が粋で、率直に胸を打つ。情けと男気を縦軸に、判断に必要な要素を横軸に設定するイメージで、それを短期、中期、長期の視点でシュミレーションしていく。そのうえで、リスクより「目的そのもの」を上位に捉えることを説くのがまろの特徴だ。結論に至る考え方を重視する思考法なのだ。例え結果的に誤った判断だったにしろ、「ありのままを受け止めればいい」と、妙な潔さも芽生えさせてくれた。この思考プロセスは染み付いた。また、話のなかで「学問と学習と勉強の違いは何か」、「会話をする前提として、単語やことばの意味を確認しておくこと」等々、一見見落としがちな基本事項も教示してくれた。これも財産になっている。こういうことは勿論大学で教えるべき事柄ではない。どこかで吸収してくるべきものだ。わたしの場合はまろだった。当時、小生のような学生が何人いたことか。まろがなかったら卒業していなかっただろう面々を思いだすと懐かしい。久しぶりに友と行き会いたいものだ。信大夜間部といわれ、多くの信大生を「卒業」させてくれたまろを、信大創立60周年の節目にあたり、ささやかながら皆様に紹介し、別途顕彰したいと思う。 我等がまろよありがとう信大とともに永遠に(了)