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全研究総覧

エコロジカル・プラニング手法による地域計画と、伝統的な植生・土地利用パタンとの比較による綜合的な地域景観の抽出とその評価 【地域】 飯田市上村 下栗地区

はじめに

わが国では、少子高齢化社会や、CO2 の大幅な削減を公約に抱える時代を向え、従来のような都市域の一方的な拡大と、農山村社会でのダムや高速道路等のハード整備を進めてきた地域計画や、公共事業そのものをあり方が抜本的に見直す時代に突入した。また、近年の市町村合併により多くの自治体は、農林地を含む広範囲の土地利用計画に見直しが要求されている。

方法(調査地)

図-1 マクハーグのレイヤーケーキモデル図-1 マクハーグのレイヤーケーキモデル 図-2 評価結果のオーバーレイ図-2 評価結果のオーバーレイ

本研究は、環境計画の総合化の観点から、1960年代に提案されたエコロジカル・プランニングの手法による山間地域の適正土地利用計画を行う。エコロジカル・プランニングの手法は図-1、2のように様々な研究分野における環境区分および、ある土地利用に対する適正評価を重ねる手法なので、森林科学科の各専門分野のみならず、農学部、理学部、人文学部を含めた様々な分野の教員の地域評価を総合化し、その結果と伝統的な土地を読む技術の成果としての過去の土地利用の結果との比較する計画である(図-3)。

結果と考察

図-3 Ian McHargのオーバーレイ手法と人為的な環境区分を用いた地域計画手法図-3 Ian McHargのオーバーレイ手法と人為的な環境区分を用いた地域計画手法 図-4 復元した第二次世界大戦後の飯田下栗上村地区の植生・土地利用図図-4 復元した第二次世界大戦後の飯田下栗上村地区の植生・土地利用図

エコロジカルプランニングの手法を用いた地域評価手法と、伝統的な植生・土地利用図の比較については、既に発表していた関連論文の地域計画手法に関する部分を大幅に加筆修正し、以下の媒体で発表を行った(図-3)。
1.よみがえれ里山・里地・里海 里山・里地の変化と保全活動- ISBN 978-4-8067-1408-8
里山・里地の保全・活用計画手法とその潜在力評価 分担執筆、築地書館、2010
2.論説:上原三知(2010):生態系および農林地(里地・里山)の持続性と土壌保全に配慮した地域計画手
図-2 評価結果のオーバーレイ
ある土地利用に対する適正を各分野(地質、土壌、地下水、森林、土地の価格、傾斜区分)ごとに評価した結果を重ねあわせる手法。、さまざまな観点を綜合した適性環境が抽出される。
図-1 マクハーグのレイヤーケーキモデル
実際の環境は様々な要素の上に成立したものであり、その総合化が持続的な環境を創るのに必要であると1969年に指摘している。
その総合化は各研究分野の細分化とは逆の発想が必要であることも指摘しており、中山間プロジェクトの理念と一致する。
法:地盤工学会誌 Vol.58, No.9, p6-9
その一方で、コアサイトとする長野県飯田市下栗地区の伝統的な植生・土地利用パタンの復元を行った。その結果、伝統的な植生・土地利用では、日射量に恵まれた南面に住宅、畑地が多く、北側斜面や、谷地に樹林地が多いなど地形や気候に適合したと思われる土地利用の配分が確認できた(図-4)。

今後の方針と計画

2年目は、この土地利用形態と、エコロジカル・プラニングによる環境評価結果との関係性を分析し、環境評価指標としての終戦後の土地利用形態の環境情報指標性について解析する予定である

成果

論説:上原三知(2010):生態系および農林地(里地・里山)の持続性と土壌保全に配慮した地域計画手法:地盤工学会誌 Vol.58, No.9, p6-9

研究者プロフィール

上原 三知
教員氏名 上原 三知
所属分野 農学部 森林科学科
所属学会 人間・環境学会、環境情報科学、日本建築学会、エントロピー学会、日本造園学会
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他の研究 イメージマップによる里地・里山の認知・利用領域と有用植物認知度の世代間比較生物多様性の保全・再生を考慮した里地里山の景観保全管理計画の構築