• 受験生の方へ
  • 医師の方へ
  • 企業団体の方へ
  • 卒業生の方へ
  • 地域の方へ
  • 在学生の方へ

研究トピックス

研究活動

医学部、医学系研究科、医学部附属病院で現在行われている主な基礎研究、臨床研究を紹介します。

研究活動一覧へ

創薬シーズ開発の効率化に向けた次世代疾患モデルマウスの迅速作製技術開発

臓器発生制御医学講座・発生再生医学分野  新藤隆行・桜井敬之・神吉昭子

病気の治療標的となる新しい分子の役割を研究したり、新しい医薬品を開発していく上で、その病気のモデルとなる様な実験動物が存在するか否かが、研究の成否を握っています。
マウスは、現在、自在に遺伝子を改変する事が出来る唯一の哺乳動物です。特定の遺伝子を過剰発現させたマウス(トランスジェニックマウス)や、欠損させたマウス(ノックアウトマウス)は、人の病気のモデルとなりうることから、医学において重要な研究開発ツールとされています。しかし従来、遺伝子改変マウスを樹立するには、多くの費用と時間がかかるという難点がありました。我々は医薬開発のための遺伝子改変マウスを、短期間、低コストで作製する独自の新技術=SCOT(Speed Conditional Gene Targeting)の実用化を目指しています。
この研究は、H21年度、科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援事業(A-STEP)に採択となりました。A-STEPは、産学共同研究を推進するために開始された新しい事業で、大学の研究成果の実用化を目指しています。
この研究は、現在、信州大学および、東京お台場にある日本科学未来館研究施設(毛利衛館長)にて進行中です。

図 ノックアウトマウス作製のために、ES細胞から作り出されたキメラマウス


詳しくは、教室ホームページを御覧下さい。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~shindo/
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/department/doctor/zouki/organ/index.html

若年者虚血性心疾患患者における発症危険因子の特徴と予防戦略

保健学専攻  本郷 実・畔上 真子・柳澤 節子

近年の食生活の欧米化、車社会による運動量の減少などライフスタイルの著しい変化に伴い、動脈硬化性疾患の疾病構造には大きな変化が生じています。私たちは、1980−1999年に発症した若年者(20-40歳)急性心筋梗塞、狭心症患者、の冠危険因子についてその特徴を5年毎に検討しました。その結果、肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病などのうち3つ以上の危険因子を有する患者、特に肥満患者の頻度が最近特に増加していることを報告しました。その後、調査を長野県内全域に展開して、若年者虚血性心疾患患者について発症と生活習慣病、発症の季節変動などとの関連を解析しました。その結果、中高年群(50歳以上)の発症危険因子は高血圧であったのに対して、若年群の最も重要な発症因子は肥満、特に18歳未満の小児期肥満で、夏季の発症リスクが高く(図1)、喫煙との関連が強いことを明らかにしました。発症メカニズムとして、急性(脱水、喫煙)および慢性危険因子(小児期肥満、運動不足、生活習慣病、喫煙など)の関与が示唆されました(図2)。発症の予防戦略はこれら双方の危険因子に向けられるべきであり、若年群における効果的な予防教育や、ハイリスク対象者の判別に寄与し得るものと考えます。

 

図1 若年者虚血性心疾患患者における発症リスク(1992—2002年、101例)

図2 若年者における虚血性心疾患の発症機序


長年探し求められてきた仮想分子はLRP4であった

加齢適応医科学系独立専攻 分子細胞学部門 神経可塑性学分野

 

  シナプスは単に神経シグナルの流れる「通路」ではなく、神経シグナルの流れやすさや大きさを自己調節している。このシナプスの持つ可塑性が巨大な神経回路網の機能を最大限に発揮させる。シナプス内には非常に精巧な情報処理分子装置 (Postsynaptic density, PSD) が備わっているが、それは500から1000種類のタンパク質が集まって作られている。新規PSD分子の一つとして我々が数年前に見つけたのがLRP4という、シナプスにはこれまでに見つかっていなかったタイプのレセプターである。一方、神経・筋接合部の形成は神経終末から分泌される糖タンパク質agrinが筋側に作用することによって起きるという「agrin仮説」が1990年に提唱されていたが、agrinと筋側のMuSK (Muscle-specific kinase)の間にギャップがあり、その間に仮想分子の存在が予想されていた。最近、Lin Mei博士との共同研究で、このLRP4分子が、長年にわたって探し求められてきた仮想分子そのものであることが明らかになった (Neuron, 2008)。この分子の欠損では神経・筋接接合部の形成が起きなくなる。その異常が重症筋無力症の原因の一つではないかとも示唆されている。LRP4に関しては現在、コンディショナルノックアウトマウスが完成間近で、今後は脳内のシナプスにおけるLRP4の機能、関与する病態の解明を目指している。LRP4以外にも、多くの未解明のPSD分子の探求を行っている(図1)。

 

図1


ピロリ菌から胃を守る糖鎖

分子病理学分野 病態解析診断学講座

慢性胃炎や胃・十二指潰瘍、胃癌の原因であるピロリ菌は世界人口の約半数に感染していますが、感染者が必ずしも重篤な胃疾患に進展するとは限らないこともよく知られています。この事実は胃粘膜自体にピロリ菌に対する何らかの防御因子が存在している可能性を示しています。ピロリ菌は胃粘膜の表層に棲息し、深層には認められません。胃粘膜深層の腺粘液細胞から分泌される粘液は特徴的にα結合型N-アセチルグルコサミンを含む糖鎖を含んでいます。最近我々は、この糖鎖がピロリ菌の細胞壁に特徴的な糖脂質であるコレステリル-α-D-グルコピラノシドの生合成を阻害することでピロリ菌の増殖や運動能を抑制し、その結果ピロリ菌感染から腺粘液細胞自身を防御していることを発見しました。α結合型N-アセチルグルコサミンは元来胃の腺粘液内に存在しているから、この研究成果を基に副作用のない新たな抗ピロリ菌薬の開発へと発展することが期待されます。

ph_research_activities01.jpg


α結合型N-アセチルグルコサミンの存在下で培養したピロリ菌(αGlcNac(+))では菌の形態に伸長等の著明な変化が認められる。コントロールは、α結合型N-アセチルグルコサミンの非存在下で培養したピロリ菌(αGlcNac(-))。スケール= 1μm
(Kawakubo et al. Science 305, 1003-1006, 2004より許可を得て引用)

 

NADPHoxidase(Nox)ファミリー遺伝子の癌化における機能的役割

分子細胞生化学講座 Mitsushita, J., Lambeth, D., and Kamata, T

NADPHoxidaseは、NADPHを基質として、活性酸素(・O2-)を産生する膜酵素(図1)で、マクロファージ(貧食細胞)に存在して、外界からの病原菌を殺し、生体防御の役目をもっています。ところがNADPHoxidaseの新しいファミリー(Nox)遺伝子が、1999年以来、続々と発見され、自然免疫以外の多様な生命現象における役割が示唆され、それを解明することが、重要な問題となっています。私たちは、Noxファミリーのひとつ Nox1がRas発癌遺伝子で癌化した細胞の細胞増殖、形態(アクチンストレスファイバー)、浸潤能、造腫瘍能を媒介することを発見し、Ras癌化過程には、Nox1の産生する活性酸素によるレドックスシグナルが、必須であるというモデルを提唱しました(図2)。また、ヒトすい臓癌でもNox4が、 AKT-ASK1キナーゼを介した抗アポプトシス作用を果たし、癌細胞の生存に必要であるというexcitingな発見を行いました。さらに、Nox1の新規標的蛋白として、LMW-PTPホスファターゼや小胞体レドックス蛋白ERp72を同定し、GATA-6がNox1遺伝子の転写因子であることも解明しました。さらにこのシグナル伝達機構を詳細に検討することで、新しい癌化機構を解明しつつあり、将来は診断・治療への応用を追究します。


図1  図2

図1                                   図2
(Mitsushita, J., et al. Cancer Res. 64: 3580-3585, 2004.より改変)

アレルギー発症の鍵をにぎる好塩基球

移植免疫感染症学講座・免疫制御学分野

移植免疫感染症学講座・免疫制御学分野喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー反応が始まる時には、まず2型ヘルパーTリンパ球(Th2細胞)が作り出されます。最近、好塩基球と呼ばれる血液中にごくわずかしか含まれていない白血球の一種が、インターロイキン4(IL-4)という物質を放出してTh2細胞を作り出すことが発見され、アレルギー研究者の注目を集めています。好塩基球にIL-4を作らせる物質としてはIgE抗体が知られていました。でもIgE抗体はTh2細胞の補助によって産生されるものですから、この仕組みはすでにアレルギー反応が進んだ後に働いているものです。私たちは、免疫応答の最初に作られるインターロイキン3(IL- 3)と呼ばれる別の物質が好塩基球にIL-4を作り出させることに注目しました。そして、FcRg(エフシー・アール・ガンマ)と呼ばれる分子を無くしてしまった好塩基球は、IL-3で処理するとちゃんと細胞分裂しますが、IL-4は全く作らないことを発見しました。FcRgはIL-3レセプターに結合していて、IL-4を作れという信号だけを伝えていたのです。実は、IgE抗体がIL-4産生を命令する信号もFcRgが伝えています。つまり、ひとつの分子(FcRg)が、アレルギー反応の始まりと反応が進んだ後では違うレセプターとペアになってはたらくという予想外の仕組みが明らかになったのです。この発見は、アレルギー疾患がどうやって始まるのかを解明するための重要な一歩であり、将来的には予防法の開発へとつながることが期待されます。

詳しくは、当講座のホームページをご覧ください。

 

 

研究トピックス