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研究内容

一般の病院にはない、大学医学部附属病院の大きな特色は研究です。従来の治療法に限界を感じたとき、これを打破することが出来るのは唯一研究しかありません。世界的にスタンダードな教科書、up-to-dateな論文を読むことは大変重要なことです。しかしながら、大学で働く大学人はそのような教科書や論文を読む受信者だけではなく、それを送り出す発信者になることが出来るのです。これは大学人の使命であり義務でもあります。

若いうちから世界のトップレベルの研究室に留学できる、というのも当科の大きな特徴です。ありきたりな言い方ですが、学問には国境がなく、仕事を通してどこにでも行くことができます。海外に留学し、海外の研究者たちとディスカッションし、研究成果を発表することにより大きな自信と達成感が得られます。終生の師や友人を得ることがあるかもしれません。海外での留学生活は必ずや人生の財産となるでしょう。ぜひ当科に入局して海外に羽ばたいてください。

長野県高齢糖尿病患者に関する前向き観察研究 Nagano Study 2

高齢者糖尿病治療の管理目標や予後に関する十二分なエビデンスが欠如している中、1998年から6年間にわたり、当教室の関連病院を含む多施設共同で、長野県高齢糖尿病患者に関する前向き研究 Nagano Studyが行われました。その結果、

 

  • ・高齢糖尿病患者の生命予後は正常人とほぼ同様である。
  • ・最多の死亡原因は「癌」である。
  • ・網膜症の発症・進展にHbA1c上昇が関連する
  • ・登録時の腎機能低下が高死亡率と関連する。
  • ・LDL-C上昇は心血管イベント発症と関連する。
  • ・脳梗塞既往患者では血圧降下と高死亡率が関連する。
  • ・HbA1cと死亡率にはU字カーブの関係がある。

 

など示唆に富む知見が得られました。しかしながら、

 

  • ① 食後血糖がHbA1cと独立した心血管イベントの危険因子となるか?
  • ② 血糖降下療法の種類による相違はあるか?
  • ③ 血圧、脂質と予後との関連はあるか?
  • ④ インスリン分泌能・抵抗性と経過やイベント発生との関連はあるか?

 

など、結論を得られていない課題もあります。この課題を解決すべく、当教室では長野県高齢糖尿病患者に関する前向き観察研究Nagano Study 2に取り組んでおります。死亡や心血管イベント、網膜症、腎機能、血糖・血圧コントロール、脂質プロファイル、QOLに関して綿密に長期間追跡を行うことを通して、高齢者糖尿病治療の新知見を見出し、科学的根拠に基づく糖尿病患者の治療目標設定や治療選択に貢献できるよう努めてまいります。


少量スピロノラクトン投与による糖尿病性腎症の尿中アルブミン減少効果

末期腎不全(透析療法)に至る患者さんのうち40%以上が「糖尿病性腎症」が原因であり、1998年以降、透析導入原因疾患の第一位を占めています。尿中アルブミン排泄量の増加は、腎機能悪化の強い予測因子であることは周知の事実ですので、糖尿病患者さんの尿中アルブミン排泄量を減少させることは、腎機能悪化さらには透析導入を遅らせるために非常に重要です。以前からミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるスピロノラクトンが尿中アルブミン排泄量を減少させることはわかっていましたが、副作用として血中のカリウム上昇などのリスクが高いため臨床現場では普及されてきませんでした。しかし私達はこれまで、スピロノラクトンの一般的な最低使用量のさらに半量という、ごく少量の投与により、尿中アルブミン排泄量はしっかり減少し、一方で血中カリウム上昇などの副作用は生じにくいことを明らかにしてきました。スピロノラクトンは最も古くから使用されてきた薬剤で基本的に安全性は高く、さらに薬価は他に類を見ないほど低いため、この治療法は、安全でかつ医療費削減というメリットを併せ持つ非常に重要で、信州発の新たな治療法になると確信しています。


糖尿病患者におけるインターバル速歩の有用性

糖尿病患者さんにとって運動療法は必須ですが、未だ食事療法ほど確立されていないことが常に問題になっています。信州大学スポーツ医科学教室が考案したインターバル速歩は、速歩3分とゆっくり歩き3分を交互に行う運動療法で、有酸素運動とレジスタンス運動がミックスされており、気軽に誰でもどこでも行うことができます。インターバル速歩は松本市の熟年体育大学に入学するなどして参加することが可能で、20年以上の歴史を持ち、これまで8700人以上の一般市民の方が参加されてきました。その継続率の高さと、体力・筋力・生活習慣病指標の改善効果の高さで、世界中で注目されています。運動療法が最も重要であると言っても過言ではない糖尿病患者さん達にインターバル速歩を行い、どれほどの継続率でどのような効果(血糖や脂質代謝・体力・筋力など)があるのかを調べるのが私達の研究の目的です。まずはパイロット研究として単群研究、そしてその結果により統計学的根拠を持って前向き比較研究を行う予定です。インターバル速歩が、糖尿病患者さんの新たな運動療法として、今後世界に広がることを強く期待しています。


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