活動報告

「地域医療実習」の報告会が開催されました

11月8日(金)に、夏季休業中にお行われた県内枠推薦入学の3年生(18名)を対象とした「地域医療実習」の報告会が開催されました。

実習施設は、①小谷村診療所、②上田市武石診療所、③伊那市国保美和診療所、④リバーサイドクリニック、⑤佐久総合病院付属小海診療所、⑥町立辰野病院、⑦南牧村出張診療所、⑧佐久総合病院地域ケア科、⑨長野県立阿南病院、⑩市立大町総合病院、で、それぞれの施設に、1~2名の学生がお世話になりました。

報告会には、指導医の上田市武石診療所所長 廣瀬聡 先生、リバーサイドクリニック所長 安藤親男 先生、町立辰野病院院長 漆原昭彦 先生にもご出席いただきました。

以下が発表内容の抜粋です。

☆訪問診療では、本当に驚くことが多く、印象に残っています。非常にきれいに、整頓されたお家でご家族に大切に介護されている方もいれば、独居で、生活保護を受けながら、市営住宅の蒸し暑い中、寝たきりの方もいらっしゃいました。家に入らせていただくということは、その人の生活をそのまま見ることになり、その人を診るという、印象がますます強くなりました。・・病院に来ている患者さんは、地域で暮らしている患者さんのほんの一部であり、また、来ている患者さんでさえ、見せてくださっているのはほんの一部であるということを実感しました。

☆実習を通して、病院の医師やスタッフさんが口を揃えておっしゃっていたことがあります。それは、「小さな病院だから、、、」という言葉でした。例えば検査科の職員さんは大学病院と比べた評価として、「小さな病院だから、検査機械も標準的なものしかないですよ」とおっしゃっていました。この「小さな病院」という言葉は、今回の実習における学びのキーワードになっています。「小さな病院」には、他にはない良い点があるのです。・・今回の実習を通して、地域における病院がどのような役割を担い、医師がどのように働いているのかを具体的に掴むことができました。地域医療は患者との距離が近いとは言うけれど、どんな風に近いのか、大学病院とどう違うのか、そういったことを今回の実習で学びました。

☆「へき地医療」の話を聞いたりしていると、自然と「将来自分たちが医師になったときも誰かがへき地で医療を行わなければならない」と思いがちである。確かに今いわゆる「へき地」と呼ばれているところも医師の需要はある。ところが先生が渡してくださった資料を見ると、「へき地」のイメージが強い市町村などに比べ、人口の多い「市」の方が圧倒的に高齢化率が高くなっている。それは長野県全体や日本全国でも同じことが言え、全国の医療介護の余力を見てみると、今回見学させていただいた佐久地域は「医療は余裕・介護は平均レベル」なのに対し東京・神奈川や名古屋などの大都市は「特に厳しい」となっていてとても驚いた。これを解決するためには、移住するかシステムを移植するかのどちらかで、移住させることは非現実的なので、今高齢社会の最先端をである地区で行われている医療体制を参考にしていくことが重要だと知った。この実習は「将来へき地で医療を行うときのため」でもあるかもしれないが、松本市などのへき地でない場所で医療を行うためにも大いに役立つことを学べるのではないかと考えた(将来大都市で働くなら尚更)。

☆できる限り患者の希望がベースラインになるような医療というのが地域医療には大切なのだと感じた。急性期医療を主に扱う病院では、患者の命を守ることが、生活どうこうよりも大切にされている。しかし、急性期の医療は設備や人員の関係上対応できないが、地域の住民の健康を守ることが主な役割とされているような診療所では、治療行為のみに力を入れるのではなく、患者さんのその人自身ならではの生活を含め、医療を通して生活を守ってゆくことが必要とされている。・・患者一人一人にはそれぞれの生活があるため、全員が医師の言うことを実行できるとは限らない。そこで、患者と一緒に生活を考え、実行可能な範囲に患者自身に納得してもらうことが、生活習慣病予防のアドバイスを行う上で大切なのだと感じた。

☆先生が大切にしていることとして、「患者さんの病気そのものだけでなく、生活を支える」、「基本的に慢性疾患の患者が多いが、広い観点で患者を診る」、「何か変だなを見逃さない」、「本人が満足していることが一番」という4点を挙げていた。3日間の実習を通じて、診療所ならではの患者さんとの距離の近さは随所に見られたが、時間を長くかけて患者さんと接することができるからこその言葉だと感じた。

☆医師と患者さんが最もコミュニケーションを取ることができ、医療を最大限に活用できる関係性は対等な関係性であり、つまりは、「患者さん」の関係性である、と私は考えた。この対等な関係性は医療資源が限られた地域医療において、大きな役割を果たすのではないかと考え、この関係性を先生は実践していらっしゃいました。

☆先生は素早い問診と簡単な検査を行い、大動脈解離疑いで救急搬送するという判断を下した。実際その患者さんは病院へ運ばれて、検査を受けたところ大動脈解離であったらしい。この現場を見学させていただいたことで、訪問診療はただ患者さんやその家族に寄り添いやすい医療というわけではなく、設備が整っていない自宅という場で適切かつ迅速な判断が必要な高度な医療なのだと思うようになった。今回の実習で訪問診療を見学させていただくまで、訪問診療は比較的症状の軽い患者さんのもとへ足を運んで様子をただ見に行くようなイメージがあったため、訪問診療の現実を知る機会になったと思う。

☆訪問診療の目的は、患者が望まれる形で最期を迎えられるように私たち医療者が一体となってサポートすることである。そのためにはお話の中であったり、部屋に飾ってあるもの、身の回りの生活環境からその人が今までに歩んできた人生、人となりを知る(見抜く)ことが不可欠である。またそうすることで医療者と患者間の信頼を築き、より多くのことを知るとともに相手の知りたいことを適切に伝えられるし、身体面だけではなく心の面での支えにもなる。信頼という大きな土台のもとで「患者の人となりをよく知る」ことと、「患者ないし家族に適切に伝える」こと、「心の支えとなる」ことで、患者は自分の望む医療、心づもりを正直に伝えてくれると思う。