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理科教育ブログ

上級CST生物研修会_ウシガエルの解剖

2013.10.21 【 CST

CST研修講座「ウシガエルの解剖」を20131019日開催しました。

JST(科学技術振興機構)のご支援をうけて「理科の伝道師を育てる」本学のCST(コア・サイエンス・ティーチャー)プログラムもいよいよ最終年度に入り,ウシガエルの解剖の研修講座も今回が最後になりました。

来年度以降もぜひ続けてほしいとの各方面からの要望もあり,何とか予算を獲得するべく皆で 努力しています。ご支援をよろしくお願いします。

 さて,ウシガエルは明治時代にアメリカから食用になるのでカエル解剖実習風景2013顔ぼかし.jpgはと持ち込んだ人がいて,現在まで,その繁殖力の強さから,日本固有の生態系を破壊しながら,爆発的に繁殖し,北海道の一部を除く全国の池,沼,田んぼで繁殖しています。トウキョウダルマガエルなどはその住む場所をどんどん奪われています。そこで環境省は外来生物にウシガエルを指定し,捕獲して環境から取り除き,これ以上の拡散を防ごうとしています。詳しくは環境省の外来生物法のページをご覧ください。

 一方,学校教育のなかでは体の中の仕組み(呼吸・消化・排出・循環)を小学校と中学校で繰り返し学習します。小学校では具体的に教えるべき臓器名が学習指導要領に記載されました(肺。胃,心臓,肝臓,小腸,大腸,腎臓の7つです)。ですから,各臓器の体内での位置,形,色,働きなどを知ることがまず必要です。中学ではさらに物質循環の観点が加わり,分子のレベルで,でんぷんやタンパク質がどの臓器でどのように消化されるかを追求します。これらはもちろん各臓器をその実体として知っていることが役にたち,従来は小学校で魚の解剖,中学校でウシガエルの解剖が熱心な先生によって行われてきました。ところが詳細に解剖するということは,その動物の命を奪うことになりますから,「生物を愛護する」,「生命を尊重する」という面から行いにくいという状況がうまれていました。さらにウシガエルが外来生物に指定され,宅配便で取り寄せたウシガエルを一晩おいて,翌日解剖するだけでも,環境省の許可が必要になり,現場でウシガエルの解剖を含めた動物解剖を行う先生が激減しました。本来は鶏肉,豚肉,牛肉のいずれかを児童生徒のほぼ全員が食べているので,だれかに殺してもらうのではなく,その動物の命を自分たちで奪い,解剖して最後に食べるのが,理科教育だけでなく,「命」を考える道徳教育の面でも,「食育」の面でも重要だと思いますが,それでは貴重なタンパク源である鶏肉,豚肉,牛肉を食べられなくなる児童・生徒がでてしまいます。また,ブタ,牛の命を奪う場面は絶対に見せてもらえません。そこで,環境から排除しなければならないと決まった外来生物を,解剖動物として教育に利用し,体内の臓器を観察するとともに,「命」を考える総合学習にもなると思います。

 そのためには,まず,簡単であるけれど,煩雑な環境省の許可の取り方を知り,解剖の実際についての研修が重要になってきます。今回は5名の参加者があり,皆さん,ウシガエルの解剖は初めてでとても有意義だったとおっしゃって頂きました。ぜひ来年度以降も,予算を確保して行えればと思っています。

 

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