2013.01.15 【 CST 】
【初級CST】最新の科学情報を学ぶ特別授業
「低温の量子現象-電気伝導と比熱-」
金沢大学人間社会研究域 学校教育系 辻井 宏之 先生
1月12日(土)9:00-14:30にW506講義室で辻井先生の集中講義が行われました。
辻井先生のご専門のブレークジャンクション(BJ)法を用いた電気伝導における量子現象の話とフロリダ大学との共同研究で行われた強磁場下での磁性体の比熱測定の話をしていただきました。
BJ法は,金属細線をピコメートルオーダーの精度で切断させる 技術で,その方法を用いると,金属細線が切断される寸前には1原子-1原子で点接触したような状態が実現でき,そこでは,電気伝導(コンダクタンス)が量子化された値,またはそれに近い値をとるということを基礎から解説していただきました。またアルミニウムを希釈冷凍機で冷却し,BJ法で接合サイズを自在に制御された実験では,マクロな視点では気付かない,ミクロな電子の振る舞いを想像できるようなお話が聞けました。
後半の強磁場中の比熱測定の話は,アメリカのフロリダ州にある国立高磁場研究所で行われた実験で,大変スケールの大きな話でした。33 Tのマグネットを動かすと,フロリダ州の州都タラハシーの全電力の4%もの電力を1つの装置で費やしてしまうそうです。そこで行われた実験の中で,今回は,幾何学的なフラストレーションを強く受けた,量子スピン系三角格子反強磁性体の強磁場中での秩序状態の研究の話をしていただきました。
学生の方は,日頃の授業では聞くことのできない話で難しいことも多かったと思いますが,最先端の研究の一端を垣間見ることができたのではないでしょうか。辻井先生,どうもありがとうございました。