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理科教育ブログ

【初級CST】最新の科学情報を学ぶ特別授業「超低温に現れる不思議な液体:超流動ヘリウム」

2012.12.10 【 CST

RIMG0337.JPG担当していただいた先生は、慶應義塾大学理工学部物理学科 特任助教 村川 智 先生です。

12月8日(土)9:00-16:10にW505講義室で村川先生の集中講義が行われました。
 村川先生は,超低温におけるヘリウムの研究分野で最先端を走っておられる気鋭の若手研究者です。講義では,豊富な映像や動画に加え,様々な関連例を取り上げ,ユーモアを交えたお話を聞くことができました。数式をあまり使わず,本質的なポイントを押さえた講義をしていただきました。初めて聞く単語や言葉もあったかと思いますが,研究の雰囲気を感じることはできたのではないかと思います。
 内容は,まず,温度の概念と低温技術の話からスタートしました。低温には限界があり,絶対零度には絶対に到達できませんが,4Heの蒸発冷却(1.5 K),3Heの蒸発冷却(0.3 K),3He/4Heの希釈冷凍(~5 mK),核断熱消磁冷凍(~50 マイクロK)という冷凍技術を使って,絶対零度に肉薄することができます。絶対零度に近づけるということは物質のエネルギー最低の状態(基底状態)がいかなるものかを研究することにつながります。古典力学では,絶対零度で物質の運動は凍結(静止)すると考えられますが,量子力学によると,物質を低温にしていくと,粒子性の性質とは表裏をなす波動性の性質が強く現れるようになってきます。その効果が最も顕著に観測される元素が,希ガスのうち,最も質量数が軽いヘリウムです。ヘリウムといえば,風船に詰め込まれていることはよく知られていますが,低温に冷却すると,通常の物質とは大きく様相が異なってきます。絶対零度付近まで冷却しても,25 atm以上の圧力をかけないと固体になることができず,絶対零度でも液体として安定に存在します。この液体が粘性のない超流動とよばれる状態です。超流動が関与する様々な現象の動画を多数見せていただきました。また,この超流動という現象が,ボース-アインシュタイン凝縮(運動量空間における凝縮)という状態であること,また,電子系の超伝導との関連性についても解説していただきました。
最後の時間は,正に現在進行形の最先端の研究についてお話ししていただきました。細孔中でどのように超流動の芽が成長していくのか,また,ヘリウム3の超流動において観測された,壁境界表面付近の状態など,非常に興味深いお話を聞くことができました。村川先生,どうもありがとうございました。

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