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11月29日(水) 遺伝子実験部門講演会「記憶の生物学」

06年11月28日

ヒト環境科学研究支援センター生命科学分野遺伝子実験部門では、医学部の鈴木龍雄生と工学部の片岡正和先生にご協力を頂いて、以下のように講演会を開催致します。皆様のご来聴をお持ちしております。

日時 平成18年11月29日(水)午後4時半~

場所 信州大学旭キャンパス旭会館SUNS会議室

SUNS回線を通じて、各キャンパスの会議室及び常田キャンパス大学院棟604号室にそれぞれ中継いたします。

お問い合わせ先
遺伝子実験部門・林田  (eneres@giptc.shinshu- u.ac.jp,内841-5800)
演題 「記憶の生物学」

講師 沖縄科学技術研究基盤整備機構 大学院大学先行研究プロジェクト 
記憶と学習の分子神経生物学ユニット  遠藤昌吾 代表研究者


要旨
記憶は「経験により引き起こされる行動の変化」と定義される。記憶が脳にあることは明らかであり、記憶は脳高次機能の一つとして各種の脳機能を支える中 心的な役割を果たしている。生体は外界からそして体内から各種の感覚情報を受容し、感覚記憶(貯蔵)に貯える。貯えられた情報は脳を含む中枢神経系により 処理され、各種の行動や応答が生じる。このようにして用いられた感覚情報の大部分は、瞬時に失われる。しかし、我々が注意を払った感覚情報は経験として、 短期記憶あるいはー生涯保持される長期記憶に保存される。経験は様々な形で生物の行動・判断に影響を及ぼす。記憶は神経細胞がミリ秒単位のチャネル活動に より獲得した大量の感覚情報を神経可塑性(神経の柔軟性)により貯え、かつ、必要に応じて取り出すことを可能にする、巨大かつ精密な機構である。
記憶は日々の営みに必須であり、各種の疾病やケガによる記憶障害は日常生活を困難にする。また、無意識のうちに数十年にわたり貯えられた記憶は、ヒトの パーソナリティー形成に関与し、日常生活のあらゆる場面で我々の行動に影響を与えている。ヒトの生存に必要な基本情報は遺伝子により規定されるが、個々人 が異なる環境で生存するためには、環境に関する情報を貯え順応する必要がある。脳の本的な構造や神経回路網は遺伝子上の情報により規定される。しかし、神 経細胞間の情報伝達効率には可塑性が存在する。記憶は、脳の可塑性を用いて遺伝子上の限られた情報を補い、ヒトを環境に適応させ生存させるという重要な役 割を担っている。
ヒトの行動の基盤となる記憶は古くから哲学や心理学の対象として注目されてきた。また、脳の神経回路網が、ある種の柔軟性を持つことが予想され、それが 記憶の基盤となるという仮説が提唱された。Donald Hebb(ドナルド ヘッブ)が仮定した神経回路網の柔軟性、すなわち、神経可塑性が1970-80年代に発見され、神経可塑性が細胞レベルでの記憶の基 盤として電気生理学の研究対象となった。過去20年間は、分子生物学の飛躍的進展に伴い、記憶そして神経可塑性の分子機構が研究対象となり、記憶-神経可 塑性-細胞内分子機構という一連の研究が進展した。
本講演では、各種分類や性質などの記憶の基礎知識、ヒトの脳傷害の解析から明らかにされた記憶の機構等について述べる。また、当ユニットで行なわれてい る遺伝子改変動物を用いた記憶研究の最新の知見についてふれる。そして、現在沖縄で進行中の新しい大学院大学構想についても触れてみたい。

詳しくはこちらをご覧ください。
http://gene_rc.shinshu-u.ac.jp/kouen/koen41/koen41.html