だいちのかけらプロジェクト

だいちのかけらプロジェクト信州大学教育学部 竹下研究室

長野県デジタル地質図について

ごあいさつ

このホームページについて

長野県デジタル地質図2015を知っていますか? 約半世紀ぶりに改訂された長野県の地質図です。デジタルなので立体的な図をつくったり、クリック1つでその場所の地層や岩石に関するデータを表示したりできる優れものです。地質図には大地の歴史がまとめられているので、過去の現象(災害)を探るヒントになり、将来を予測することにも役立ちます。
でも残念ながら、「地質図は難しくて使いにくい」と思われているようで、学校の教材としてほとんど使われていないのが現状です。そんな状況を変える必要があるのではないかと感じ、県内の小中高校の先生、研究所の研究員さん、博物館の学芸員さんと研究チーム(だいちのかけらプロジェクト)を立ち上げ、地質図を気軽に活用してもらうための教材づくりをはじめました。
材料の1つとして選んだのが、河原の石ころ(礫)です。河原の石ころは、子どもたちにとって身近な存在であるだけでなく、地層や岩石のかけらなので、大地の歴史を秘めています。さらに、室内に持ち込むことができるので、教材として使いやすのです。
このホームページでは、だいちのかけらプロジェクトの成果を紹介します。このページが、みなさんが大地に興味をもつきっかけになったならうれしいです。
なお、本ホームページは、JSPS科研費補助金(17K00965)の支援を受けて構築されたものです。

竹下欣宏(信州大学教育学部)

だいちのかけらプロジェクトメンバー

竹下欣宏、富樫 均、中川知津子、井手俊毅、縣 晴香、古川智恵、渋谷孝信、土屋武史、笠原弘大、田澤岳哉、桐生和樹、村松 武、田辺智隆、陶山 徹、関めぐみ

(※ご注意※)イラスト画像や標本ラベル・写真の使い方に関するお願い

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長野県デジタル地質図の作成にあたり

東日本大震災や土石流や火山噴火災害が各地で発生し、地形や地質の成り立ちへの関心が高まっています。長野県デジタル地質図2015は、長野県全域を対象にオリジナルな統一地質凡例と最新の研究データをもとに、縮尺5万分1の精度でまとめられたシームレスデジタル地質図です。全県の統一地質図は、長野県地学会が1957(昭和32)年にまとめて以降、半世紀以上にわたりその内容がほとんど改訂されないままになっていました。本図では、図の精度を格段に向上させ、地層の種類と形成年代をもとに、多種多様な地質を約240種類に分類し、活断層の位置等も詳しく記されています。本図は、多くの研究者の献身的な協力により、着手から約10年の歳月をかけて編纂されました。
このデジタル地質図が、長野県における地震・火山・土石流災害などへの対策や、観光、環境保全、研究、教育等の幅広い分野へ活用されますよう期待します。

平成27年11月
長野県地質図活用普及事業研究会
代表 原山 智(信州大学教授)

地質図とは

地質図は山や盆地などがどのような地質から出来ているのかを、地形図の上に表現したものです。地層や岩石などの分布が色分けされ、記号とともに図に示されます。ある地域がいつの時代にどのように出来たのか、どんな自然現象が起こったのか、そこがどういう性質をもつ場所なのかなど、地質図には過去から現在までのさまざまな情報が盛り込まれています。

地質図大町市周辺(部分)
大町市周辺(部分)

長野県地質図を新しくした理由

1957年に長野県地学会によって縮尺20万分の1の長野県地質図が作成されました。その後一部の改訂はありましたが、精度が粗く、日本列島の出来方が古い考えのままでした。新しい地質図では、縮尺5万分の1の地形図をもとに、最新情報を入れ、内容の全面的な見直しがはかられました。

どこが変わったのか

  1. 基になる地形図の縮尺が1/20万から1/5万に拡大されました。
  2. 統一地質凡例により、県内の多種多様な地質が約240の記号で簡潔に表示されました。
  3. 1980年代以降の地球科学に関する新しい研究成果を入れ、県内のすべての場所で切れ目のない(シームレスな)地質情報がまとめられました。
  4. 扇状地や段丘等の新しい時代の地質が、これまでになく詳しく表現されました。
  5. GIS(地理情報システム)上で取り扱うことができるよう、情報がデジタル化されました。

デジタル地質図の活用

長野県デジタル地質図2015では、長野県全域の地質情報が統一的に表現され、一般のGIS(地理情報システム)ソフトで扱えるファイル形式でまとめられました。そのため、防災、観光、教育、環境保全などのあらゆる分野で幅広く活用することができます。

地質図の立体表示
数値地形モデルと合わせることで、地質図の立体表現ができます。
立体化により、地質情報がさらに理解しやすくなります。
地質図の立体表示
さまざまな情報と重ねることで、防災対策等に効果的に使えます

その1さまざまな情報と重ねることで、防災対策等に効果的に使えます

地質や活断層の分布等と地すべりや土砂災害警戒区域の情報、あるいは避難施設や道路等のインフラ設備などと重ねることで、より効果的な防災マップの作成に使えます。

災害現場等において、即座に地質情報を確認できます

その2災害現場等において、即座に地質情報を確認できます

GPS(全地球測位システム)機能をもつタブレットPC等に地質情報を入れておけば、災害現場等において、必要なときに、必要な地質情報を、その場で確認できます。

「大地の成り立ち」の学習に効果的に使えます

その3「大地の成り立ち」の学習に効果的に使えます

野外で地形や風景を見ながら地質情報を確認することができます。また数値地形モデルにデジタル地質図をはりつけると、地質分布を立体表示できます。立体表示された地質図により、どなたでも大地の成り立ちを直感的に理解することができます。

景勝地などの魅力的な観光案内に役立ちます

その4景勝地などの魅力的な観光案内に役立ちます

地質は山や景勝地の成因に深く関わるため、観光地の案内をするのにも地質図が役立ちます。日本は、世界でも第一級の地殻変動帯です。外国人に日本の自然のすばらしさを伝えるときにも、地質図は欠かすことのできない基本資料になります。

統一地質凡例とは?

長野県デジタル地質図2015のために、新しい統一地質凡例を作成しました。凡例の色と記号は、縦軸の地質時代と、横軸の岩相・岩質の区分に対応します。これにより、全国一の複雑さと多様さをもつ長野県の地質が、約240の記号で統一的かつ簡潔にまとめられました。

付加体とは?

プレートテクトニクスの理論とともに、1970年代後半以降に一般に知られるようになった新しい地質区分です。海洋プレートの沈み込みにともない、陸側に付加されて出来た特殊な構造をもつ地質体を意味します。付加体は日本列島の骨格をつくる地質で、長野県デジタル地質図2015では、その特徴がわかりやすいように凡例表現も工夫しています。

付加体形成の模式図
付加体形成の模式図

長野県デジタル地質図2015作成までの経緯

2001年12月 県地質図改訂の必要性に関する意見交換会(会場:信州大学理学部)
(信州大学、県自然保護研究所の研究者、県内の自然史系博物館)
2005年11月 県地質図作成のための事業提案(県事業への提案)
2006年2月 県地質図作成準備会合(会場:長野県庁)
(信州大学、県環境保全研究所の研究者、自然史系博物館)
2006年4月 県主要事業として、新版長野県地質図作成事業を開始。
(作成に協力した研究者 計42名)
2010年3月 原図案をとりまとめて県事業終了。完成は研究者に託される。
2010年~ 原図編集とデジタル化統合準備作業を継続。
(県内の研究者有志による)
2012年8月 地学団体研究会第66回総会学術シンポジウムにおいて取り組み紹介。
2015年1月 (一社)北陸地域づくり協会による研究助成事業募集に応募。「オリジナル統一凡例による5万分の1長野県地質図の活用普及事業」を提案し、採択が決定(3月)。
2015年4月 地質図のデジタル化・統合処理に着手。
2015年9月 日本地質学会第122年学術大会ならびに地質情報展2015(ながの)においてこれまでの取り組み紹介。
2015年11月 長野県デジタル地質図2015の完成。

長野県デジタル地質図パンフレット

地質図についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

長野県デジタル地質図2015パンフレット
長野県デジタル地質図2015パンフレット

地質図に関するお問い合わせ先

地質図の入手方法やその他のお問い合わせは以下までご連絡ください。

富樫 均
E-mail:iztogashi88@gmail.com