信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 土,人口芝および芝生の運動場の微気候条件と運動選手の耐暑性に関する環境生理学的研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.6 Vol.6

 要旨

 土,人工芝,芝生,コンクリートなど運動場の材質のちがいによって輻射熱がどの程度異るかを明らかにするために,陽光ランプ・赤外線ランプを用い,6月中旬に相当する日射量を各材質に一斉に照射しサーモグラフィにより表面温度を黒球温度計により,実効輻射温度を測定し,さらに打ち水をした時の冷却効果を併せて実験し,環境生理学的な立場から最も望ましいグラウンドの材質は何かを明らかにするとともに,夏季土のグラウンドで2時間余り野球の試合をした時の投手のエネルギー代謝量,発汗量が秋季に比べてどの程度異るかを明らかにした.
 さらに夏季暑熱環境下で運動をする野球部,陸上部と水中で冷刺激を受ける水泳部員各5名の耐寒性.耐暑性に違いがみられるかをIBP(International Biological Program,国際生物事業計画)による局所性耐寒性・耐暑性テストを改良した方法で行った結果,耐暑性については,発汗量,発汗濃度とも野球部が最も少なく,次いで陸上部・水泳部の順となった.耐寒性については,冷刺激を受けた時に現われる寒冷血管反応について分析すると水泳部が最も耐寒性にすぐれ,次いで陸上部はともにすぐれ,寒冷刺激を受ける水泳部は耐寒性がすぐれていることが実証された.
 人は環境とのつながりで,その受ける環境への適応能力が獲得されたという一面をもつとともに環境からの過重のストレスは,運動そのもののストレスに加えられ,時には適応能を越え,健康障害を伴うこと,とくに暑さに対する人の適応能を保つ闇値は寒さに対する場合より低く1),容易に日射病,熱射病を起すに至ることを十分に念頭におき,運動環境管理を行わなければならない.
 とくにグラウンドの日射による表面温度の上昇は,材質により異り,人工芝はコンクリートよりも上昇度が高いこと,土と芝生は同程度であるが,芝生は葉の蒸散作用によりある程度で押えられること,土は芝生と同程度であるが,45分以降は芝生より上昇してしまうこと,これらの現象に対する打ち水の効果は大であることなどが明らかになった.

「デサントスポーツ科学」第6巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 羽鳥好夫, 鈴木路子, 新井豊, 林徹, 高橋勝彦, 丸石淳一, 高橋康行, 大音備, 浜田克利, 木村康一, 高島二郎
大学・機関名 東京学芸大学

キーワード

人工芝運動場輻射熱環境生理学局所性耐寒性耐暑性テスト