信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF テニス肘の予防に配慮した指導法に関する研究(Ⅱ)

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.10 Vol.10

 まとめ

 1.ストローク法の違いによるプレイヤーの前腕筋群への筋負担量の評価を行なった結果,次のような点が明かとなった.
 (1)フォアハンド・ストロークにおける高い位置でのインパクトは初級者に多くみられたが,より低い位置でインパクトするストロークに比較して前腕筋群,特に屈筋群への負担を大きくしていることが明かとなった.
 (2)フォアハンド・ストロークを両手打ちした場合には,片手打ちより前腕の伸筋群、屈筋群のいずれに対しても負担が軽減されるが,その程度は左右どちらの手をグリップの上に置いて握るかによっても差がみられた.
 (3)バックハンド・ストロークにおいては,上級者が両手打ちを行った場合には,ポール・インパクト前後にのみ顕著な放電が集中してみられ,片手打ちの場合にみとめられた他の期の強い放電は減少消失した.通常は片手打ちを行っており,両手打ちには慣れていない初級者でさえ,両手打ちによってきき手の伸筋群にかかる負担をかなり軽減できることが明かとなった.
 (4)サービスは,自由なベースで行った中・上級プレイヤーの筋負担量の分析によると前腕筋群への負担が非常に大きいという結果を得ていたが,フォアハンドやバックハンド・ストロークと同じ程度のインターバルで行った場合には,他のストロークに比較して大きな筋負担となると考えられる点は特に見あたらなかった.
 2.上記の結果からテニス肘の予防を配慮したテニス・ストロークの指導ポイントとして次の点があげられる.
 (1)フォアハンドやバックハンド・ストロークでは,クローズド・スタンスをとるように意識させ,バウンド・トップでのインパクトは避け,低い位置でのインパクトを心がけさせる.
 (2)バックハンド・ストロークに限らずフォアハンド・ストロークにおいても,両手打ちで行わせる.
 (3)サービスの練習は,少なくとも他のストロークのインターバルでもって行わせる.

「デサントスポーツ科学」第10巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 根本芳男*1, 吉澤正尹*2, 熊本水瀬*3, 井谷徹*4, Bengt Jonsson*5
大学・機関名 *1 大阪教育大学, *2 福井大学, *3 京都大学, *4 岡山大学, *5 スウェーデン労働衛生研究所

キーワード

テニス肘ストローク