信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 青年期の運動鍛錬者が長期間休止後に再開したときの身体諸機能の変化とその対策

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.10 Vol.10

 要旨

 一定期間のトレーニングを行ない,長期間の休息後再び運動を行った際の身体諸機能の変化を検討することにより,安全な運動処方に関する基礎的資料を提供する目的でWistar系雄性ラットを対象として実験を行った.実験は持久的トレーニングを行った(12週間)後,休息させた(8週間)群(ST)と持久的トレーニングを継続して行っていた(20週間)群(CT)に一過性の持久的運動を負荷した直後の動静脈血中および筋中生化学物質の動態を比較して行なった.一過性の運動に伴う血中グルコースの低下および血中乳酸の上昇はST群がCT群に比して顕著であり,血中乳酸に関しては両群間に有意な差が認められた.組織中のグリコーゲンの減少にはいずれの組織においても,ST群とCT群の間には有意な差は認められなかった.しかし,各組織における乳酸含有量の上昇に関しては,特に骨格筋(SOL,EDL)においてST群がCT群に比して高値を示す傾向が認められた.
 一過性の運動直後の骨柊筋中酵素活性値(CK,LDH,SDH,MDH)の動態は,SOLにおいてCT,ST,C群の順に高値を示し,SDHとMDHに関してはC,CT両群間に有意な差が認められた.EDLについてはいずれの酵素においても,各群間に有意な差は認められなかった.
 以上のような結果より,トレーニング休止8週間後に行わせた一過性の運動に対する生体負担度はトレーニングを継続していた群に比して、はるかに大きい可能性が示唆された,従って,トレーニング休止後の再開に対しては,以前のトレーニングの効果を過大評価せず,充分な配慮をすることが必要である.

「デサントスポーツ科学」第10巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 吉岡利忠*1, 山田幸宏*1, 竹倉宏明*2, 宮地元彦*2
大学・機関名 *1 聖マリアンナ医科大学, *2 鹿屋体育大学

キーワード

身体諸機能持久的トレーニング休息トレーニング休止