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PDF 各種スポーツ実施者の摂取栄養の質的・量的バランスの検討(Ⅱ) 青年女子の有酸素運動時の糖質・脂質代謝に及ぼす食事時間の影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.10 Vol.10

 要約

 運動時の糖・脂質代謝に及ぼす食事の影響を検討するために,健康な女子大学生(21〜22歳)を被検者とし,自転車エルゴメータによりsteady stateの成立する中等強度(5kcal/min)の有酸素運動を食事前の軽度の空腹状態と,食事直後のやや満腹状態において,30分間負荷し,運動開始直前,直後および60分後に静脈血を採取して,血糖,血中乳酸量,血竣中の中性脂肪(TG),遊離脂肪酸(NEFA),蛋白質等を測定し,併せて運動中の呼気を採取してガス代謝をしらべた.主な結果は次のとおりである.
 1)血糖値は食前負荷・食後負荷のいずれの場合も,運動開始直前値は正常範囲にあり,運動直後は有意の低下を示した.運動終了後60分にはほぼ負荷前値に回復した,運動直後の血中乳酸は無酸素闘値(4,M/Z)を超えることははかった.
 2)血築NEFA値は,食前運動負荷の場合,運動開始直前の値は正常範囲のやや高いレベルにあり,運動直後には有意に低下した.次いで食事を摂取させ,60分後のレベルは上昇せず,むしろ低下する傾向がみられた.食後運動負荷の場合,運動開始直前の血漿NEFAレベルは低く,運動直後はさらに低下する傾向を示したが,その程度は食前運動負荷の場合に比し軽微であった.血柴TG値は,食前.食後いずれの負荷の場合も,運動開始直前は低く,運動直後にやや増加する傾向がうかがえるが,有意差は認められなかった.
 3)ヘモグロビン量,血漿蛋白質量は,食前負荷・食後負荷のいずれの場合も,また,運動開始直前値と運動直後の値を比較しても,有意の変動は見られなかった.
 4)運動中のガス代謝測定によるRQから算出した糖質:脂質の燃焼比率は,食前運動負荷の場合,平均約50:50で,脂肪の燃焼比率は決して高くはなく,食後負荷の場合は脂肪の比率は若干低下する傾向がうかがわれた.
 5)以上の結果から,体脂肪の減量を目的として実施する運動について,その強度と持続時間を実施時刻と食事時刻との関連から,極めて効率がよく(脂肪燃焼比が極めて高く),しかも健康増進に役立つ形で運動処方を作成することは困難であることが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第10巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 万木良平*1, 小池五郎*1, 石川和子*1, 坂口栄一*2, 山崎省一*2, 近藤陽一*2
大学・機関名 *1 女子栄養大学, *2 防衛医科大学校

キーワード

糖・脂質代謝食事有酸素運動血糖遊離脂肪酸(NEFA)燃焼比率