信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 競泳選手における疲労性作業閾値の非観血的および簡便的決定法の開発

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.13 Vol.13

 本研究の目的は,クリティカルパワー(CP)の概念を競泳競技に応用し,水泳疲労性閾値としてのクリティカルスピード(CV)を求め,CVが持久性運動能力を示す指標として有効であるかを検討することである。このCVは,理論的に疲労せずに長時間泳ぎ続けることのできる最大レベルの泳速度を意味し,泳距離とその時の時間との直線関係のスロープ(傾き)であらわされる.
 大学水泳部所属およびスイミングクラブ所属の男子選手8名に対し,流水プールを用いて4段階の流速(1.60,1.65,1.70および1.75m/s)で,また25mのプールにおいて50m,100m,200m,400mの最大努力泳を実施した.その結果,各泳距離とその時の時間との関係は,全被検者において相関係数0.998以上で有意な正の関係(P<0.001)を示すことが判明した.そして,CVはその直線の傾きであらわされることになる(流水プールによるCVをCV-flume,一般プールによるCVをCV-poolとする).さらに,最大酸素摂 取量の測定(Vo₂max)と血中乳酸濃度4mMに相当する泳速度の算出(V-OBLA)を行い,CV-flume,CV-pool,400m泳速度(V-400)の関係を調査した.その結果,CV-poolとCV-flume(r=0.824,P<0.05),CV-poolとV-400(r=0.998,P<0.01),CV-flumeとV-400(r=0.823,P<0.05),V-OBLAとCV-pool(r=0.898,P<0.01),V-OBLAとCV‐flume(r=0.856,P<0.01)そしてV-400とV-4BLA(r=0.907,P<0.01)に有意な関係がみられた。それゆえ,CVは,流水プールだけでなく一般のプールにおいても決定することができ,一般のプールで測定したCVは持久的な運動能力を示す指標としても有効であることが判明した.

「デサントスポーツ科学」第13巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 若吉浩二*1, 吉田敬義*1, 森谷敏夫*2, 葛西拓司*3
大学・機関名 *1 大阪大学 , *2 京都大学, *3 セントラルスポーツ研究所

キーワード

水泳疲労性閾値クリティカルスピード(CV)持久性運動能力指標