信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF トレーニング効果と個体差に関する基礎的研究 ― Ⅳ. 腱切除が骨重量に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.13 Vol.13

 骨は運動の場で,筋収縮による効果を発現するための器官としてとらえられ,身体全体では,体内塩類濃度の恒常性維持のために,カルシウム等の貯蔵庫として欠くことのできない重要な役割を担っている,骨は常にダイナミックに骨形成と骨吸収を繰り返しながら,形態を維持し,さらに血液との間でカルシウムの取りこみと汲み出しを行ないながら,血清カルシウム濃度を一定に保ち続けている.骨強度の維持のためには,若年時にPeaki Massをより高いレベルまで引き上げておくことと,加齢にともなう骨量の減少速度を,できるだけ緩やかなものにすることが求められている.これら二つの観点を中心に,身体運動の骨代謝に対する役割に関する先行研究を見た.まず前者の運動が骨量に及ぼす影響については,Nancyoyster 2)が60〜69歳の女子は食事内容より活動量の方が皮質骨径との相関が高く,50〜59歳の健康女子では身体活動レベルが,Bone Mineral Massに影響していることを報告した.K.C.Rapae1(1984) 3)はBed Rest,無重力,不活動ギブス固定などの状況は,カルシウムロスを生み,骨の脱灰化を起こすことを指摘している。しかしながら,その量の変化や機序については不明な点が多い.後者について見ると,Smith(1984) 4)は運動が骨のカルシウム含量の減少を抑制すると報告している.このように,先行研究では運動がPeak Bone Massの増加に寄与し得る可能性,および加齢による骨量減少速度の低下に役立つ可能性を示している.しかしながら,運動刺激が骨に与える影響の個体差については,いまだ論議をほとんど見ないが,各報告者の実験結果にはプラス効果ばかりでなく,個体差の存在を予測させるものがある.
 本研究では,骨に対するトレーニング効果の個体差について研究する第一歩として,近交系マウスを用いてテノトミーにより,両下肢の問に骨格筋からの刺激の質的,量的な差を生じさせ,骨重量に与える影響を検討した.また,その影響を遺伝的要素と環境的要素に分離して考察を試みた.

「デサントスポーツ科学」第13巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 山本順子*1, 山田茂*2, 内間高夫*3, 藤巻正人*3
大学・機関名 *1 相模女子大学, *2 東京大学, *3 財団法人民生科学協会総合研究所

キーワード

骨形成身体運動の骨代謝トレーニング効果筋切除(テノトミー実験)遺伝的要因