信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 高齢者に対する運動指導は骨粗鬆症の予防法となり得るか

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.14 Vol.14

 これまでの多くの研究で,運動が骨代謝に好影響を与えることはよく知られている.そこで,われわれは薬剤を用いない骨粗籟症の治療,あるいは予防法の確立を目指して,老人性骨粗霧症に対する運動療法の臨床応用の可能性について検討した.老人ホーム在住の62歳〜91歳の男性69名(平均76.3±5.9歳),女性91名(77.9±6.2歳)を対象とした.
 腰椎・大腿骨・擁骨の骨塩量をDual energy X-ray absorptiometry (DEXA)およびSingle photon absorptiometry (SPA)を用いて測定し,さらに安全で簡便な方法を考案して,上下肢筋力・腹筋力・脊椎柔軟性・バランス・一日歩行数の各指標を計測し,骨塩量との相関関係および経年変化について検討した.また,骨粗髪症の予防の最大の目的は,骨折の予防であるので,脊椎圧迫骨折数の変化にも検討を加えた.経年変化は,Paired-t検定にて行った.
 女性においては,柔軟性・筋力・歩行能力にすぐれたものが高い骨塩量を示し,経年変化においては,筋力の低下が著明であり,歩行数の少ない者の骨塩量が,より減少する傾向が認められた.男性では,歩行数と大腿骨骨塩量との間に相関が認められたが,他の活動性の指標と骨塩量の間には有意な相関は認められず,骨塩量・活動性ともに経年変化はほとんど認められなかった.
 脊椎圧迫骨折の1年間における新発生は,調査開始時の骨塩量が,平均より高値を示した群に有意に多かった.
 以上の結果より,骨粗籟症の運動療法は,十分可能であると思われた.

「デサントスポーツ科学」第14巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 小池達也*1, 佐藤哲也*1, 市川宣恭*2
大学・機関名 *1 大阪市立弘済院附属病院, *2 大阪体育大学

キーワード

骨代謝骨粗籟症老人性骨粗霧症運動療法骨塩量