信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 運動量の概算法に及ぼす年齢・肥満の問題

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.14 Vol.14

 運動強度×運動時間瓢運動量が成立する.一方,運動強度は歩行速度・走速度に比例することから,運動量の簡易な算出法を,つぎのように提案した(1989年).
 1.運動量(除く安静時代謝,kcal)=歩行距離(km)×体重(kg)/2
 2.運動量(除く安静時代謝kcal)=走距離(km)×体重(kg)
 今回,この概算法に及ぼす年齢および肥満の影響を観察する目的で,9〜45歳9.1〜31.6%脂肪の成人を被験者に,3段階の歩行速度および走速度を負荷したところ,つぎの結果が得られた.
 1)成人の歩行においては,平均歩行速度(70m/分)以下での酸素需要量が,0.1m/O₂/kg・mに近似することより概算値と一致し,歩行速度が速くなると,概算値よりも+20kcal/4km歩行となった。基礎代謝量の高い児童では,歩行時の酸素需要量は0.138mlO₂/kg・mと,成人より高値となったが,体重が軽いことにより,概算値との差は成人と同じく+20kcal/4km歩行となった.また,歩行においては,概算値に及ぼす体重および肥満の影響は観察されなかった.2)成人の走運動においては,平均走速度(110m/分)以上での酸素需要量が,0.2mlO₂/kg・mに近似することより概算値と一致し,走速度が遅くなると,概算値よりも-20kcal/4km走(-7%)とわずかに低下した.この現象は,体重の重い人ほど顕著であった.また,基礎代謝量の高い児童の走運動では,概算値よりも+10kcal/4km走(+7%)となった.心拍数より運動量を概算する場合には,次式を提案した(1989年).
 3.運動量(除く安静時代謝,kcal)嬬運動時心拍数(拍/分)×時間(分)×定数
 定数(kcal/拍)=METSmax×体重(kg)×A/最大心拍数(拍/分)
 今回の歩行・走運動および自転車エルゴメータ運動より,つぎの結果が得られた.
 1)A値は,成人では0.015,児童(10歳)では0.013と固定できた.しかし,50%HRmax以下の運動ではA/2と算出された.
 2)心拍数より運動量を概算する定数は,成人では,走速度約150m/分の定常状態の走速度と,心拍数を計測することにより算出される.
 定数=0.193(mlO₂/kg・m)×0.005(kcal/mlO₂)×走速度(m/分)×体重(kg)/運動時心拍数(拍/分)

「デサントスポーツ科学」第14巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 小林康孝*1, 吉岡利忠*1, 安納弘道*2, 清田寛*2
大学・機関名 *1 聖マリアンナ医科大学, *2 日本体育大学

キーワード

運動量歩行距離走距離年齢肥満歩行酸素需要量走運動心拍数