信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 筋力等と骨密度の関係および運動実施による骨密度の変化について

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.14 Vol.14

 超高齢化が進む中で,骨粗懸症患者が急増している.また,長距離ランナーを含めた若年女性の問にも低い骨密度が報告されている.骨密度と筋力をはじめとした影響要因との関係を疫学的に調べ,運動実践の効果を求めることで,骨密度低下の防止策にきわめて重要な情報を与えることができると考えられる.
 本研究では,健康な成人男女を対象とし,骨密度と年齢,体格,筋力,栄養摂取量およびアルコール摂取量との関連性,骨密度と筋力等との年間変化率間の関連性および運動実践が,骨密度と筋力等へ及ぼす影響について検討した.結果は以下の通りである.
 ①男性の腰椎骨密度に対して最も多項目で有意な相関性が認められた.
 ②骨密度に対する相対的貢献度は,腰椎骨密度および大腿骨頸部骨密度とも男性では体格,女性では血中成分が高い傾向であった.
 ③年齢,体格および筋力と比較して,血中成分,栄養摂取量およびアルコール摂取量では,骨密度と有意な相関の認められた項目は少なかったが,女性においては,それらの統合作用としての重要性が示唆された.
 ④各部骨密度に対するその他の項目の寄与率は,男性の腰椎で最も高かった。また,男性の腰椎骨密度においては,身長,%fat,膝関節伸展力および背筋力が,実用的測定項目として意義が深いと考えられた.
 ⑤骨密度の年間変化率は,筋力のそれよりも低値であった.また,女性において腰椎骨密度の変化率と体重(20〜39歳),および膝関節屈曲力のそれらとは有意な正の相関が認められたが,膝関節伸展力のそれとは有意な負の相関が認められた.
 ⑥運動により腰椎骨密度は,維持あるいはやや増加する傾向が認められたが,呼吸・循環機能や膝関節の筋力へ対する効果ほどは期待できないと思われた.骨密度と筋力等の運動による変化率問の関係は明瞭ではなかった.また,運動にバウンディングを取り入れた男性では,両骨密度に著しい増加が観察され,その効果が示唆されたが,なお慎重な検討が必要であろう.

「デサントスポーツ科学」第14巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 岡野亮介*1, 勝木建一*1, 碓井外幸*1, 勝木道夫*1, 宮野正彦*2, 中田勉*2, 山口昌夫*2
大学・機関名 *1 財団法人北陸体力科学研究所, *2 リハビリテーション加賀八幡温泉病院

キーワード

高齢化骨粗懸症骨密度筋力運動腰椎骨密度