信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 柔道選手の減量とコンディショニング(スポーツライフのバックグランドとなる食習慣の確立を目指して)―体重別試合時の自由な減量とその影響―

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.14 Vol.14

 本研究の目的は,体重階級制スポーツにおける試合前のコンディショニングを成功させ,スポーツライフのバックグランドとなる,食習慣の確立を目指すために必要な基礎資料を収集することである.
 対象は,実際に体重別試合に臨む大学柔道部員(男子16名,女子8名)である.今回は,各人の判断による自由な方法で減量を行い,この間の食物摂取状況や体調の観察,およびコントロール期と減量後(試合前日)の体力や血液性状の成績を減量グループ別(非減量群,6%未満減量群6%以上減量群)で比較することによって,減量が生体に与える影響を検討した.
 体力・血液性状:体力においては,減量体重2.8〜8.5%程度では,減量によるマイナスの影響がほとんどみられなかったが,10%を越すと筋力(とくに背筋力)に顕著な低下が認められた.血液性状については,減量群では試合前日のAL-P,LDH,尿素窒素に水分の制限や発汗による血液濃縮を上回ると考えられる有意な増加が認められ,アミラーゼ,中性脂肪,総コレステロール,HDL−コレステロールに有意な低下が認められた.これらの変化は減量体重の大きいグループほど顕著であった.また,WBCの有意な減少は,減量体重の小さいグループにも認められた.
 食事・体調:試合前23日間の食事内容と体調の記録からは,減量体重の大きい者ほど試合が近づくにしたがって,熱量はもちろんのこと,タンパクなど他の必須栄養素の摂取量が極端に減少しており,体調の自己評価が著しく低下している場合の多いことが観察された.また,非減量者や減量者のコントロール期の食事記録を見れば,詳細な栄養素摂取量を計算するまでもなく,通常の食生活での問題点がかなり指摘できる。
 以上の結果より,本調査では,1)階級制スポーツの試合前の減量は,その程度が少ないほど身体に及ぼす影響も少なく,そのためには,2)まず通常のスポーツ活動を支える食生活習慣の確立が早急の課題となっていること,3)ついで,最も生体に影響の少ない減量のあり方,ことに食事(栄養)管理の重要性が具体的に示された.

「デサントスポーツ科学」第14巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 木村みさか, 松田基子, 岩田勝, 荒木雅信
大学・機関名 大阪体育大学

キーワード

体重階級制スポーツ食習慣減量血液性状食生活習慣