信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 中高年者のアクティブライフにおけるベテランズ競技の役割とその取り組み方に関する研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.15 Vol.15

 避けることのできない高齢化社会の到来,それは自分と自分の身体を自らの努力で守らなければならない時代の到来である.この時代への対応として筆者らは数年来,中高年者のアクティブライフプランニングに関する研究を手掛けてきた.本班究はその一貫としての研究で,中高年者のうち,最も積極的にスポーツ活動をアクティブライフプランに取り組んでいる人々が,その集約として参加するベテランズスポーツ大会についてどのように取り組んでいるか,また,スポーツ大会がそれらの人々のアクティブライフづくりにどのような役割を果たしているかの究明を志向したものである.平成5年10月7日〜17日までの11日間,宮崎県営運動公園で開催された,第10回世界ベテランズ陸上競技選手権宮崎大会の参加者を対象に,アンケート調査と医・科学的調査の二面から研究調査を行った.
 (1)アンケート調査
 日本人参加者には日本語版アンケート用紙を,また,外国人参加者には英語版アンケート用紙を,参加申込受付確認証の郵送交付の封筒に同封して全員に送付した.回収は大会会場での大会参加登録時に,その受付場所に隣接して回収所を設置して回収した.
 アンケート調査の回収率は外国人20.5%(男性18.7%,女性24.9%),日本人42.9%(男性43.3%,女性41.2%)であった.外国人の回収率が低かった一因は,外国人向けの調査用紙が英語版だけであったことだと考えられる.英語を日常語としている国の参加者に限れば,回収率は約40%であった.
 回答者の年代別比率は,40歳代43.8%,50歳代28.5%,60歳代12.6%,70歳以上4.2%であった.
 1)ベテランズ大会の取り組み方について
 外国人と日本人とでは参加の動機にかなりの違いがある.外国人は「日本という国に来てみたかった」と「世界の陸上競技仲間に会うことができる」がほぼ同数で上位をしめ,っいで「体力の限界への挑戦として」を動機としている.これに対して日本人は,日本での開催ということもあってか,「とにかく世界ベテランズ競技選手権に参加したかったので」が最も多く,「健康づくりの一貫として」,「世界の陸上競技仲間に会うことができる」,「自分の体力評価のバロメータとして」が続いている.
 また,大会参加のための準備については,「日常のトレーニングの実施のみで特別なトレーニングを行わなかった」との回答が,外国人56.9%(男性58.1%,女性54.7%),日本人87.0%(男性87.1%,女性86.6%)と,それぞれ最も多かった.「参加のための特別トレーニングを行った」は,外国人35.9%であったが,日本人は8.8%と少なかった.陸上競技のトレーニングを継続してこられた理由については,外国人も日本人も「競技記録へのチャレンジ精神」と「健康の保持増進を含めた,続けたいという意欲」の精神面の回答が高い率をしめている.
 2)健康面について
 回答者の約50%(日本人48.2%,外国人59.8%)が「まったく異常なくすこぶる健康である」と答えており,その他も完全に健康とはいえないが,とくに健康面での支障はないと回答している.同時に回答で注目したいのは,回答者の91.5%が定期的,または時々健康診断を受け,健康チェックを行っていることである.食生活では「とくに意識せず何でも食べる(59.6%)」,「牛乳や乳製品をとるように配慮している(57.1%)」,「できるだけ3度の食事時間を守ってとるようにしている(58.1%)」といずれも高い回答である.飲酒の習慣は81.9%があると答えたが,喫煙は88.0%がまったくないと回答している.
 (2)医・科学的調査
 競技会場に隣接した宮崎県営野球場正面スタンド下に調査場所を設定し,大会参加者のうち希望者を対象に,医学的検査として安静時心電図と血圧を,また,体力測定として形態(身長,体重),立位体前屈(柔軟性),握力と等速性脚伸展および屈曲力(筋力),最大酸素摂取量(持久性)の測定を行った.測定には31力国から男性279名,女性129名が参加した.男性の参加者の年齢範囲は40歳〜86歳まで,また女性は35歳〜71歳であった.長距離種目を専門とする者が最も多く,ついで短距離種目であった.
 年齢の増加に伴う握力の低下は,男性でより顕著であり,一般男性との違いはあまり大きくなかった.体重当たりの脚伸展力および脚屈曲力には,男女間で顕著な差が認められなかったが,Vo₂maxは,男性で女性よりかなり優れていた.年齢の増加にともない両変量とも減少する傾向が認められたが,一般人に比べて明らかに高いレベルを維持していた.

「デサントスポーツ科学」第15巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 松井秀治*1, 草野勝彦*2, 広田彰*2, 桜井伸二*3, 若山章信*1
大学・機関名 *1 財団スポーツ医・科学研究所, *2 宮崎大学, *3 名古屋大学

キーワード

高齢化社会中高年者アクティブライフプランニングスポーツ活動ベテランズスポーツ大会