信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 水温,泳速が発汗量,体温に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.17 Vol.17

 本研究は水温,泳速度が発汗量および体温変化に及ぼす影響を検討することを目的とした.大学水泳部員男子選手5名を被験者とし,実験は水温2種類(26.4℃,29.2℃),泳速3種類(被験者の1,500m自由形ベスト記録の90%,95%,97.5%の泳速度)の条件で1,500m自由形を行わせた.測定は1,500mの記録,体温(口腔温度),心拍数,自覚的運動強度(RPE)および体重減少から求めた発汗量であった.
 心拍数は,泳速順に26.4℃の場合,135.6±8.6bpm,147.6±7.0bpm,164.4±2.4bpm,29.2℃の場合,140.4±5.2bpm,157.2±4.8bpm,162.0±2.7bpmであった.RPEは,泳速順に26.4℃の場合,12.8±0.5,13.8±0.7,15.4±0.5,29.2℃の場合,11.2±0.2,13.0±0.5,15.8±0.4であった.体温変化は,泳速順に26.4℃の場合,0,34±0.09℃,0.56±0.14℃,0.96±0.07℃,29.2℃の場合,0.34±0.07℃,0.70±0.05℃,0.88±0.08℃であった.発汗量(体重減少量)は,泳速順に26.4℃の場合,2.73±0.45g/kg,4.43±0.79g/kg,5.04±1.03g/kg,29.2℃の場合,4.32±0.84g/fig,7.09±1.57g/kg,7.16±1.95g/kgであった.
 心拍数,RPE,体温変化では,泳速(運動強度)による有意な差が認められ,いずれも泳速によって上昇することが認められたが,水温による有意な変化は認められなかった.発汗量は泳速,水温いずれにおいても有意な差が認められ泳速の上昇に伴い,また水温が高いほど発汗量が多くなった.以上の結果より,本研究で設定した水温の範囲では水泳中の体温は水温よりも泳速に影響されると考えられる.水温が高くなると発汗量が増えるので,水温が30℃前後あるいはそれ以上の水温での運動強度の強い(泳速度の大きい)水泳では水泳中の脱水予防と過度の体温上昇を押さえるために,発汗に応じた水分摂取が必要であることが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第17巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 田井村明博, 管原正志, 金田英子, 山内正毅, 松本孝朗
大学・機関名 長崎大学

キーワード

水温泳速度発汗量体温変化水泳