信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 水泳の安全性に関するメディカルチェック―ダイビング反射試験を中心に―

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.17 Vol.17

 1.背臥位にて氷冷水嚢を用いるダイビング反射試験は,顔面浸水法と同様に不整脈誘発に有効であった.
 2.徐脈性不整脈は水泳中に事故を生じかけた症例で誘発されたが,危険の考えられない健常水泳愛好家にも見られた.
 3.心エコー図法による検討では,左心室充満の低下,左心室収縮機能の低下が観察され,これは必ずしも徐拍化とは一致しなかった.これらの反応は,試験中に上肢筋運動を加えることによって抑制される傾向を示した.
 4.体育大学生多数例の検査では房室結節性調律は58.5%にみられ,上室性期外収縮,心室性期外収縮もみられた.徐脈の正常範囲は2秒以内と考えられた.
 5.徐拍化はアトロピンによって減少し,これが迷走神経反射に由来することが確かめられたが,その効果には個人差がみられた.また,ダイビング反射による徐拍化は日内変動を示し,これも迷走神経トーヌスの変化によると考えられた.
 6.ダイビング反射試験の再現性は良好であったが,誘発される不整脈の種類は必ずしも一定ではなかった.
 7.顔面浸水のない体の水浸によって,安静時心拍数は有意に減少したが血圧には変化がなかった.運動に伴う心拍数の増加のスロープは水圧による影響を示さなかった.
 8.以上によりダイビング反射試験は水泳中の不整脈の出現,危険性の有無を判断するのに有用であるが,真に危険が高いか否かは,筋運動が加わる水泳中のテレメータ心電図検査や心機能の変化をも考慮して決定さるべきであろう.

「デサントスポーツ科学」第17巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 宇佐美鴨久*1, 栗原正*1, 坂本静夫*2, 岡野亮介*3, 藤本繁夫*4
大学・機関名 *1 住友病院, *2 順天堂浦安病院, *3 北陸体力科学研究所, *4 大阪市立大学

キーワード

ダイビング反射試験不整脈誘発徐脈性不整脈水泳上肢筋運動アトロピン迷走神経反射不整脈