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Research Seeds

PDF フルマラソンによる肝機能負担の再検討

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.18 Vol.18

 健常なランナーであってもマラソン後に,AST(GOT),ALT(GPT)の上昇が認められることが報告されている.しかしながら,これらの上昇が肝由来のものか骨格筋より湧出したものかは明らかではない.今回われわれはフルマラソンレースが肝へ及ぼす影響を明らかにするため,フルマラソン初級者5名を被験者として,従来の血液生化学検査の再検討に加え,肝特異性の高い血清逸脱酵素グァナーゼ(GU)活性および,血清ピアルロン酸(HY)濃度の測定によりそれぞれ,肝実質細胞および肝類洞内皮細胞への影響を検討した.その結果,CKとASTおよびALTの間に高い相関関係を認め,筋障害を反映している可能性が考えられた.同様にHYおよびGUは,レース1日後に上昇を認めたがそれぞれCKとの相関は低く,肝特異性の高いことが示された.
 以上の成績から,骨格筋からの逸脱の可能性のあるASTおよびALTだけでは肝障害を示すのには不十分であると考えられた.GUおよびHYの分析によってフルマラソンレースが,肝実質細胞および肝類洞内皮細胞へ影響することが示され,フルマラソンが骨格筋障害だけでなく肝障害を引き起こす可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 矢野里佐*1, 武田和久*1, 矢野博巳*2
大学・機関名 *1 岡山大学 , *2 川崎医療福祉大学

キーワード

マラソン骨格筋肝特異性血清逸脱酵素グァナーゼ(GU)活性血清ピアルロン酸(HY)濃度