長時間持久運動後の疲労困憊とビタミンB₁動態について
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.18 Vol.18】
本研究の目的は,長時間持久運動におけるビタミンB₁の動態と疲労度との関係を検討することである.トライアスロン(水泳3.9km,自転車180.2km,マラソン42.2km)を完走した成人男子24名(37.9±9.2歳)を対象とし,競技2日前,競技直後,および翌日に血糖,乳酸,遊離脂肪酸,ミオグロビン,クレアチンキナーゼ,血中ビタミンB₁量溶赤血球中トランスケトラーゼ活性と,尿中ビタミンB₁排泄量の測定,気分プロフィール検査(POMS),競技前と競技当日に栄養調査を行った.栄養調査の結果から,持久運動選手に推奨されているビタミンB₁摂取量2mg以上をサプリメントから習慣的に摂取している群(充足群n=16)と摂取していない群(不足群,n=8)に分類した.2群間で年齢体格競技成績,ミオグロビン,クレアチンキナーゼ,溶赤血球中トランスケトラーゼ活性に有意差はなかった.血中ビタミンB₁濃度は,競技前,不足群において充足群より有意に(p<0.01)低く,競技直後も低い傾向が認められた(p=0.086).しかし,血中ビタミンB₁濃度の競技直後の上昇度は2群間で有意な差はなかった.尿中のビタミンB₁排泄量は,競技後に不足群において低い傾向を認めた(p=0.076).また,不足群では充足群より競技直後の乳酸値が有意に高値を示した.POMS各尺度得点および疲労困慧群の出現率は2群間で差がなかったが,極度の疲労困懸状態を示した者の出現率は不足群において高い傾向を認めた(p=0.091).以上より,推奨量以上のビタミンB₁の習慣的な摂取は競技前および競技直後の血中ビタミンB₁濃度の高値と関連し,長時間持久運動による極度の疲労困憊状態の出現を予防する可能性が示唆された.
「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 小田切優子, 下光輝一, 勝村俊仁, 大谷由美子, 高波嘉一 |
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大学・機関名 | 東京医科大学 |
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