信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 脚自転車最大運動時のパフォーマンスに及ぼす走行勾配感覚の影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.34 Vol.34

 要旨

 本研究では,走行路面勾配に関する視覚情報の付加が,パフォーマンスに及ぼす影響を検討した.健康な成人男性14名(20〜32歳)が本実験に参加した.被験者は,一定負荷自転車エルゴメータ運動(運動強度:VO₂maxの100〜105%,ペダリング回転数70rpm)を,大型スクリーンの道路面走行動画を見ながら疲労困憊まで行った.実験条件は,道路面が終始平坦な動画をみせるcontrol条件,運動の終盤に平坦から走行角度が徐々に上っていくup条件,徐々に下がっていくdown条件の3種類であった.最初にcontrol条件を行い,その後日を改めてup条件とdown条件をランダムに行った.up条件とdown条件では,control条件で測定した運動継続時間の85%の時間経過後,走行面が4m/秒で上りあるいは下りに変化する映像を提示した.同時に,ガス交換諸変量,心拍数を測定した.結果として,control条件に比較して,up条件とdown条件は,ともに,運動継続時間が有意に延長した.しかしながら,走行勾配感覚提示の違いが最も大きいと想定されたup条件とdown条件を比較したところ,有意な差は認められなかった(control条件:175.1±8.7,up条件:191.2.±10.9,down条件:192.2±12.3秒).主観的な運動遂行感覚(相対的に楽に感じるか)が,被験者によってup条件とdown条件間で異なったため「楽に感じた試行(E試行)」と「きつく感じた試行(H試行)」に分けて運動継続時間を比較した(ただし,up条件とdown条件の主観的な運動遂行感覚が同じであった2名は除いた).その結果,E試行はH試行に比べて,運動継続時間が有意に延長していた(E試行:200.8±12.9,H試行:186.6.2±13.6秒,n=12).これらのことから,視覚による走行勾配感覚入力は,運動継続時間に影響を及ぼすことが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第34巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 三浦朗,遠藤(山岡)雅子
大学・機関名 県立広島大学

キーワード

走行路面勾配視覚情報自転車エルゴメータ運動疲労困憊ガス交換諸変量心拍数