運動意欲と食リズムのクロストーク: 摂食促進ホルモン・グレリンによる自発運動量制御機構の解明
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.36 Vol.36】
要旨
運動療法は生活習慣病の予防や治療において有効であり,末梢性の様々な生理活性物質に影響を及ぼすと言われている.その一つである摂食促進ホルモン・グレリンの分泌が運動前後において変化することが報告されているが,長期の運動習慣導入後のグレリン動態および肥満との関連については不明な点も多い.そこで今回,高脂肪食負荷後の肥満モデルラットにおけるグレリン動態や肥満形成に及ぼす自発運動の効果を検討した.SDラット♂を用い,4週齢時から12週間高脂肪食(HFD; 60 kcal% fat)を給与した肥満モデルラットとコントロール食(CD; 10 kcal% fat)を同期間給与した正常ラット各々に6週齢時から隔週3日間の回転かご付エネルギー代謝測定用チャンバー内にて飼育した自発運動群(HFD-Ex, CDEx),通常ケージ内で飼育した非運動群(HFD-S,CD-S)の4群を作成し,グレリン動態,体重増加,エネルギー代謝等を比較した.HFD-S群はCD-S群に比べて16週齢の時点で有意の体重や内臓脂肪量の増加を認めたが,自発運動の導入によりHFD-Ex群におけるこれらの指標はCD-Ex群と同等のレベルまで減少した.HFD-S群では活動リズムや摂餌リズムの異常が認められたが,自発運動の導入後はこのリズム異常はほぼ正常化した.HFD-S群では血漿や胃のグレリン濃度の有意な低下を認めたが,自発運動の導入により血漿グレリン濃度やグレリン産生能が回復した.自発運動習慣は高脂肪食下の肥満におけるグレリン分泌異常を是正し,活動リズムや食リズム異常を正常化し,同時に肥満を抑制することが示された.
「デサントスポーツ科学」第36巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
運動療法は生活習慣病の予防や治療において有効であり,末梢性の様々な生理活性物質に影響を及ぼすと言われている.その一つである摂食促進ホルモン・グレリンの分泌が運動前後において変化することが報告されているが,長期の運動習慣導入後のグレリン動態および肥満との関連については不明な点も多い.そこで今回,高脂肪食負荷後の肥満モデルラットにおけるグレリン動態や肥満形成に及ぼす自発運動の効果を検討した.SDラット♂を用い,4週齢時から12週間高脂肪食(HFD; 60 kcal% fat)を給与した肥満モデルラットとコントロール食(CD; 10 kcal% fat)を同期間給与した正常ラット各々に6週齢時から隔週3日間の回転かご付エネルギー代謝測定用チャンバー内にて飼育した自発運動群(HFD-Ex, CDEx),通常ケージ内で飼育した非運動群(HFD-S,CD-S)の4群を作成し,グレリン動態,体重増加,エネルギー代謝等を比較した.HFD-S群はCD-S群に比べて16週齢の時点で有意の体重や内臓脂肪量の増加を認めたが,自発運動の導入によりHFD-Ex群におけるこれらの指標はCD-Ex群と同等のレベルまで減少した.HFD-S群では活動リズムや摂餌リズムの異常が認められたが,自発運動の導入後はこのリズム異常はほぼ正常化した.HFD-S群では血漿や胃のグレリン濃度の有意な低下を認めたが,自発運動の導入により血漿グレリン濃度やグレリン産生能が回復した.自発運動習慣は高脂肪食下の肥満におけるグレリン分泌異常を是正し,活動リズムや食リズム異常を正常化し,同時に肥満を抑制することが示された.
「デサントスポーツ科学」第36巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 田尻祐司,御船弘治,滿園良一 |
---|---|
大学・機関名 | 久留米大学 |
キーワード