信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 運動負荷時の中心動脈圧波形の解析に基づく新しい血管内皮機能評価法の確立と評価基準の作成

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.38 Vol.38

 要旨

 本研究では,運動負荷中の中心動脈圧波形の解析に基づく血管内皮機能の評価法の有効性について検討した.対象者は脳・心血管疾患,糖尿病,腎疾患の治療歴がなく,血圧が正常域またはⅠ度高血圧にある健康な成人男性95名(平均年齢41.9±8.7歳)であった.運動負荷試験は自転車エルゴメーターを使用し,50%の相対心拍数に相当する強度で10分間の固定負荷運動を行った.負荷試験中は左上腕部より上腕血圧を測定するとともに,負荷前,終了直後および5分後にトノメトリ法による橈骨動脈の圧波形の記録を行った.さらに,この波形を一般化伝達関数により大動脈起始部の圧波形に変換して中心血圧を求め,橈骨動脈と中心動脈の脈圧比を反射指数とした.対象者を負荷終了5分後の脈圧比の3分位数(tertile)で分類して比較した結果,血管内皮機能の指標のFMD(内皮依存性血管拡張反応)は,低位群<中位群<高位群の順に連続的に高値となり群間に有意な差が認められた.また,FMDを従属変数とした重回帰分析において,脈圧比は年齢,BMI,上腕収縮期圧,HDLコレステロール,HbA1cの補正後も独立の有意な規定因子であった.以上のことから,運動負荷中また終了後の中心動脈圧波形には,運動誘発性の血管拡張反応が反映され,その波形変化を解析することで内皮機能の低下などの早期の血管障害を適切に評価できることが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第38巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 宮井信行*1, 牟礼佳苗*1, 有田幹雄*1, 宮下和久*1, 寺田和史*2
大学・機関名 *1 和歌山県立医科大学, *2 天理大学

キーワード

中心動脈圧波形血管内皮機能運動負荷試験血圧心血管危険因子