信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 暑熱環境の違いが運動時のヒト脳認知機能に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.38 Vol.38

 要旨

 本研究では脳波事象関連電位を用い,異なる温度環境下での運動が認知機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.実験には11名の成人男性被験者が参加した.20℃条件,および35℃条件において,体性感覚刺激Go/No-go課題を行い,自転車エルゴメータによる運動前(1回目),15分間×4セットの運動セッションの直後(2~5回目)に,脳波事象関連電位を計測した.実験の結果,行動指標である反応時間とエラー率に運動の繰り返しの効果や異なる温度環境の効果は認められなかった.体性感覚刺激処理過程を反映するN140成分の振幅は,セッションの主効果が認められ,運動の繰り返しによって徐々に振幅が低下していることが示された.さらに,その低下は35℃条件のNo-go刺激時において,顕著であった.認知処理過程を反映するP300成分の振幅は,第3セッション,第4セッションにおいて,35℃条件の方が20℃条件よりも有意に振幅が低下した.これらの結果から,反応時間などで示される反応実行系には運動の繰り返しや温度環境の効果は認められないが,高温環境下における運動は認知処理系に関係する神経活動を低下させる可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第38巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 中田大貴, 大城岬, 難波真理, 芝﨑学
大学・機関名 奈良女子大学

キーワード

事象関連電位P300脳波認知機能運動