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生物学コース松本卓也助教を代表とする研究グループが2022年度 サントリー文化財団 研究助成「学問の未来を拓く」 に採択されました。

2022年8月4日
生物学コース松本卓也助教を代表とする研究グループが2022年度 サントリー文化財団 研究助成「学問の未来を拓く」 に採択されました。
研究題目および研究グループのメンバーは以下のとおりです。

【研究題目】
排泄の自然誌を編む:ヒト・チンパンジー・ニホンザルの排泄行動の比較から始めるSDGs

【メンバー】
松本 卓也(信州大学・助教、進化人類学)、林 耕次(総合地球環境学研究所・研究員、生態人類学)、原田 英典(京都大学・准教授、環境衛生工学)、山内 太郎(北海道大学・教授、国際保健学)
【写真】
左:ドーハ国際空港のトイレ(撮影:松本)
中央上:マハレ山塊国立公園のヒガシチンパンジーの排泄行動(撮影:松本)
中央下:地獄谷野猿公苑のニホンザルの排泄行動(撮影:松本)
右:カメルーン・ロミエ地域周辺に住む、バカ・ピグミーのトイレ(撮影:林耕次)

【概要】
SDGs目標6として「安全な水とトイレを世界中に」が掲げられています。しかし、いまだに世界人口の約1割(7億人)が野外排泄を行っているのが現状です。定住化が進む近代のヒト社会でトイレの普及が遅れる理由として、排泄についての概念が各々の社会集団によって大きく異なることが挙げられます。例えばアフリカ狩猟採集民や都市スラムの事例では、規格化されたトイレの技術自体が、多様な社会・文化的集団の排泄についての価値基準に合わないことが課題として指摘されています。本研究メンバーは、理論から実践に至るまで幅広い専門的立場で、排泄に関する研究と発展途上国へのトイレ普及に携わってきました。その過程で、SDGs の目標6を達成するためには、「そもそもヒト(ホモ・サピエンス)にとって排泄とは何か」という原初的な問いに立ち返る必要があるという問題意識を共有しています。
そこで本研究では、ヒトの排泄行動およびトイレ研究に、進化人類学の視点の導入を試みます。ヒトを特別視するのではなく、進化の隣人としてチンパンジーとニホンザルがどのように排泄と向き合っているのかを詳細に調べ、これまでヒトを対象に排泄研究・トイレ普及に携わってきた研究者と、霊長類の行動の専門家である研究代表者(松本)が排泄という1つのテーマについて議論を重ねることで、SDGs目標6についての全く新しいストーリーを拓くことが本研究の目標です。
他個体とともに社会生活を営むことが求心的な行動だとすれば、忌避の対象となりがちな排泄物をひり出す行動は遠心的な行動と言えます。つまり、「トイレを世界中に」という目標を進化人類学的な視点から捉え直した時、『社会性動物が社会と排泄についてどのように折り合いをつけて行動しているか』という種横断的なテーマが浮き彫りになります。本研究では、ヒトを含む霊長類3種の排泄行動について詳細に記述することで、それぞれの種の排泄行動の自然誌を明らかにし、排泄の進化史および衛生観念の進化過程を明らかにすることを目標とします。その上で、元来トイレを持たなかったであろうヒトが円滑に新しい排泄様式を受け入れられる方法や、現地の社会・文化に応じた排泄とトイレの在り方を模索したいと考えています。

【サントリー文化財団のページ】
https://www.suntory.co.jp/news/article/14210.html?fromid=top

【研究室ホームページ】
(進化人類学分野)https://sites.google.com/view/shinshu-evo-anthro/home
(個人)https://www.sokwe-matsu.com/
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