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生物学コースの竹中將起特任助教が、河川財団奨励賞を受賞しました。

2023年9月26日
生物学コースの竹中將起特任助教が,河川基金(公益財団法人河川財団)の助成を受けて2021年度に実施した調査・研究により,河川生態における学術の進歩・発展及び社会貢献に顕著な功績を上げたとして,「河川財団奨励賞」を受賞しました.授賞式は,2023年8月25日に東京(TKP ガーデンシティーPREMIUM 京橋)にて行われました.

【受賞研究課題】
水生昆虫における正確なDNAバーコディング領域の解析手法の確立と実証
【概要】
 数多くの生物が絶滅に瀕している中で,環境保全や希少種の保全は急務の課題ですが,効果的な保全対策には対象種や生息地の生物群集を把握する必要です.しかし,これには多大な労力と費用がかかる上に,採集したサンプルの種同定には高い専門知識が必要となります.そんな中で注目されているのがDNAバーコーディング法で,高い専門知識がなくても種同定が可能なるだけでなく,希少種の非侵襲的な調査や,水一杯から生物群集を評価する環境DNA解析にも応用できます.特に,河川生態の分野,特に魚類においては,環境DNA解析を用いた研究が大きく発展してきました.しかし,河川生態系を支えている最重要分類群である昆虫類ではその手法の確立には至っていませんでした.

 昆虫類は,地球上で最も種多様性が高いことが,DNAバーコーディング法の確立を遅らせる最大の要因です.理想的なDNAバーコーディング領域,そしてこの領域を用いた網羅的な生物群集を把握には,「全ての種を区別」でき,かつ対象分類群の全種をPCRで検出する必要があります.そんな中で,従来のミトコンドリア遺伝子COI領域の問題点を指摘し,新規のDNAバーコーディング領域として,ミトコンドリア遺伝子16S rRNA領域を提案しました.そして,この遺伝子領域を増幅するPCRプライマー「MtInsects-16S」を設計しました.このプライマーは,全ての昆虫類において高い汎用性を有しつつ,そのプライマーで増幅する領域には高い多型を有しています(つまり,全ての昆虫で汎用でき,かつ種を識別できると期待できる).実際に,昆虫類の全ての系統群(無翅昆虫類,旧翅類,新翅類,完全変態類)を含めた13目42科66種においてPCRに成功し,その全種を識別することができました.さらに,この「MtInsects-16S」を用いた環境DNA解析を実施した結果,これまでにない検出力が得られました.今後の昆虫類のDNAバーコーディング法や,メタバーコーディング解析の主流となると期待できる成果が得られました.
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